こんばんは、スタジオ真榊です。今日は先日投稿した「異世界転生アウラちゃん」の制作過程をできるだけ詳細に書き起こしたメイキング記事です。おかげ様で第1話は、いつか取ってみたいと思っていたPixivデイリーランキングでAI部門1位になりました。見てくださった方、いいねしてくださった方、どうもありがとうございました!

漫画テクニックについてはご存じの通り全くの素人なので、経験者の方からはお見苦しいTIPSになろうかと思いますが、素人なりになかなかレアな経験値をいろいろ詰めたと思いますので、どういう点に気を配って作ったか思い出しながら書いてみたいと思います。私と同様、AIきっかけで創作に関心を持った方には役に立つハウツーになるのではないかと思います。

この記事では基本的にCLIPSTUDIO PROを使った作り方を解説しています。クリスタ未経験者向けの基礎的な内容はこちらの全3回の記事にまとめてありますので、こちらもご参照ください。

1.着想(モチーフ決め)

いつもの通り、まずはモチーフ決めから始めました。普段「即堕ち2コマ」系のツイッター漫画を作るときはもっと単純な着想で良いのですが、今回はちゃんとしたストーリーのある漫画なので、それなりに「何を・どんな順で・どう描くか」きちんと考えておかないと迷子になってしまうからです。

参考図書はおなじみ「マンガのマンガ」(かとうひろし・銀杏社)と、「読者は読ムナ(笑)」(藤田 和日郎 / 飯田 一史・小学館)の2冊です。

1.着想(モチーフ決め):図版1
1.着想(モチーフ決め):図版2

これまでも何度か紹介してきましたが、この2冊は全くのド素人が漫画の基礎を学ぶのにこれ以上ないテキストだったと思います。

「マンガのマンガ」は漫画の基本的文法を教えてくれる作画の教科書。「読者は読ムナ(笑)」は、現代のストーリー漫画神・藤田和日郎先生がマジのガチでご自身の言葉を使って漫画を描く心構えの初歩を説いてくださる聖典です。読者は藤田先生のところに弟子入りした新人アシスタントであるという体で、藤田先生と編集・武者さんが「漫画はイラストではないよ、止まって見える絵は漫画ではないよ」「リアリズムより漫画としての面白さを優先しなよ」「5W1Hは大丈夫?」「絵としての正しさではなく漫画としての正しさを追求しろ」「絵に情念を宿そう」「好きが個性」「コマの枠線とキャラクターの距離が重要」「連続する動きのどこをトリミングするかで表現ができるよ」ーーといった、素人にも理解できる「ごく初歩的でごく重要」な情報をみっちり教えてくれます。

まず着想において役に立ったのは、藤田先生のアドバイスの一つ「描きたいコマから逆算してストーリーを作る」です。これはよく考えると、「即堕ち2コマ」でずっとやってきたことなんですよね。だってあの2コマって、単なる「重要な説明コマ」と「もっとも魅せたい決めゴマ」の組み合わせじゃないですか。

この絵で言えば、「この主婦は普段なら絶対しないことを右のコマでしてくれているんだ」というギャップを活かすために、左のコマで必要な要素を説明していたわけです。つまり右が描きたいコマで、左が「逆算してできたストーリー部分」。これを基本にして脚本を考えることにしました。

今回はこれまで散発的に1枚絵を投稿していた「異世界転生アウラちゃん」を、ひとつの漫画としてリメイクするというのが大きなテーマ。

つまり、

・アウラが服従の魔法を破られてフリーレンに負ける(原作再現)

・しかし、実はフリーレンが「自害しろ」のあとにもう一言つけ加えていたことが明らかになる(if部分)

・気づくと現代日本の繁華街で、なぜか女子高校生の制服姿で立ち尽くしている自分に気づく(決めゴマ)

という大きな流れは既に確定していたわけです。御覧のとおり既にタイトルまで作ってあったので(笑)さほど流れに迷うことはなく、上の画像にうまくたどり着けるように逆算して各コマの内容を考えていくだけでした。

2.脚本~ネーム

ネームに取り掛かる前に、まず簡単な脚本を用意しました。それぞれのコマにおさまるべきセリフを中心に、どんなコマになるかをテキストで書いていくだけです。会社帰りの電車の中でなんとなくぽちぽちとスマホで打ったので、さほどの文章量ではありませんでした。

例えば第1話の内容をそのままメモアプリからコピペしますと…

・「アウラ、自害しろ」無表情フリーレン、背後に月、杖を持っている

・(そ、そんな馬鹿な…500年生きた大魔族の私が…?)驚愕するアウラ、ギャグ調

・「ありえない…」震える手で大剣を手に取る

・「この私がっ…!」黒背景フキダシだけ

・ザシュッ!(音だけ)「あ、そうだ」向こうを向いて立ち止まるフリーレン

・「お前、■■■■■よ」大ゴマ、つまらなそうな顔でこっちを見る、アップ

・(…あのとき、あいつは何て言ったんだっけ?)前のコマと同じフリーレンの顔、ぼやける

・(あ…消える… 500年の鍛錬も…魔力も…消えていく…)白い光に包まれるアウラ。変身バンクのような感じ

・パパーッ ザワザワ… 渋谷で目覚める 「!?」タイトルコール

これだけです。ツイッター(ツイッターです)に「ネーム5分、作画6時間」と書きましたが、これを書くのに帰りの電車の30分くらい掛かったので、正確には「脚本~ネーム35分」というところでしょうか。文字で書き留めているのはどんなアイデアを思い付いたか忘れないようにするためで、この時点で頭の中でネームも想像しています。5分というのは、頭の中のイメージをこのようにごく単純に描き起こすのにかかった時間です。

2.脚本~ネーム:図版1

ネームの描き方はよくわからなかったので、とりあえずクリスタでA4用紙を縦横に四等分して(Shiftキーを押しながらで直線が引けます)、そこにざくざく書いていきました。何がどこにおさまると自然かだけ確認する作業なので、きれいに書く必要は全くありません。

※あとでフォロワーさんに、クリスタのアセットにネーム用のテンプレートがいろいろありますよ!と教えていただきました。

デジタルとアナログ両方試してみましたが、私は外出中の空き時間にぱぱっと書けると嬉しいので、ノートにボールペンで直書きしたほうが性に合っているみたいです。スマホ上で指で書くアプリも試しましたが、いまいちでした。

・起承転結を4コマで考える

4ページにしたのはたまたまで、足りなければあとで付け足すつもりでしたが、大きな流れとして起承転結を4コマのように考えていたというのはあります。

起:原作のアウラ死亡シーン。できればちょっとだけギャグ調にはしたい

承:ifシーン。死に際のアウラにフリーレンが捨て台詞を言う。最終話までの作品テーマになる大き目の「引き」

転:転生シーン。アウラが500年の鍛錬が無為に終わったことを悔しがる

結:「!?」決めゴマ。第1話はこれが面白いだけの漫画。

これを軸にして、説明が足りないところはコマを複数にして説明していくだけです。

この時点で考えていたこととしては、次のような感じ。

・「引き」の絵と「アップ」の絵を混ぜて緩急を作る(顔アップ、顔アップ、顔アップのようにしない)

・フリーレンは感情を見せない絶対的強者(神)として描く。

・アウラは感情移入対象として描く。かわいそう感・けなげ感・小物感を大事にする

・原作シーンのシリアスさを多少絵で緩和してあげる(ちょっとだけギャグ調の絵に)

・続きが気になるような大きい「引き」を作る

・各話で描きたい小テーマ(面白ポイント)と、大テーマ(全体で伝えたい感情)を区別して決めておく

・自分を含めた読者の中にあるキャラクターのイメージと尊厳を壊さない。「言いそう」「やりそう」が一番大事

難しかったのは「緩急を作る」で、剣を拾うコマを作ったのはそのためだったのですが、結果的にはうまく作れず失敗しています。「落ちていた剣を拾い上げる手のみ」の絵、AIで作るのめちゃくちゃ難しい!

・起承転結を4コマで考える:図版1

あとは、「複数コマにわたるセリフ」というものをできるだけ多用したというのもポイントかもしれません。「アウラ、/ 自害しろ」とか、「ありえない… / この私がっ…!」というふうに、1つのセリフを前後で2コマに分けるということですね。簡単にできる工夫ですが、こうすると、私のような素人にも漫画のテンポが作りやすいのです。