
こんにちは、スタジオ真榊です。今回はイラストや漫画制作における「一貫性のある背景」をAIで作るテクニックについての特集記事です。これまでは主にcontrolnetやインペイントを駆使してSDXLの苦手な背景描画を補うのが主体でしたが、その後NanoBananaProをはじめ新技術が充実してきましたので、改めて2026年環境における現在位置と限界をあれこれ掘り下げてみました。(これまでの特集はこちら)
今回の特集では、例えばこちらの例のように、まず漫画やイラストの背景となる場所を一貫したデザインで作り出してから(左上)、それを普段のSDXL画風に変換して(右上)、さらにそれぞれの部屋の別アングルも量産し(左下)、最終的にキャラクターをそこに配置するまでの最適解を検証しています。いずれもNanobananaProを使った作例です。

SDXL背景よりもはるかに破綻が目立たず、アングルが変わっても一貫した背景を再現できるので、手描きイラストにAIで背景をつけたり、漫画作画において背景制作をAIで行う等の用途に有用かと思います。この特集を公開する直前にNanoBanana2がデビューしてしまいましたので、一部は「2」でも同じことが可能か試しながら検証しています。【約1万7500文字】
1.「AI背景」のこれまで
画像生成において、キャラクターデザインの一貫性を保つよりも難しいのが、「背景の一貫性」を保つことです。特にSDXLでは、一度生成した背景を同じように再現することがほとんどできません。浜辺などの開けた自然空間ならまだしも、このような人工的な背景だと大きく破綻してしまいます。これは、SDXLがこれらのオブジェクトの機能や意味を理解していない(=世界知を持たない)ことに起因する現象です。

SDXL用に「背景LoRA」を作ることもできますが、再現できるのはあくまで「コンセプト」だけですので、毎回同じ部屋を呼び出すというわけにはいきません。
▲Civitai「Anime Otaku Room - アニメ オタク部屋 - Indoors - Messy Room - Interior - Background」
そこで考えられたのが、Controlnetやインペイントを使って、あらかじめ用意した「正確な無人背景」にキャラクターを合成するやり方。「同じ部屋」の画像バリエーションが手元にあるのであれば、SDXLでも「同じ部屋」を再現することができます。しかし、インペイント元と生成モデルの画風が揃っていないと、このように境目が露骨に見えてしまいますし、そもそもその「正確な背景の素材」をどう揃えるのかという問題があります。
もっと難しいのは、漫画などで一度登場した背景をもう一度別アングルで登場させたい場合です。SDXL単独で「同じ部屋の別アングル」をつくるのは困難なので、これまでの特集ではWan2.2を使って推論するなどの手法で、なんとかクリアしてきたものでした。
<NanoBananaでできるようになったこと>
その後、2025年になってNanoBananaが登場し、AIを使った背景作りの手法は一変しました。NanoBananaProやQwenImageEdit2511といった最新の画像編集モデルでは、自然言語指示で破綻のほとんどない自然な背景を生成することができますし、入力したキャラクター画像の背景だけを任意に変更したり、用意した背景と合成したりすることができるようになっています。
例えばこちらの例では、白背景のキャラクター画像と風景写真をNanoBananaProに与えて「この背景の右側に女の子を立たせてください。背景は写真調で、キャラクターはイラスト調のままにします。その上で、逆光や影が自然に馴染むように美しく加工してください」と指示するだけで、イラスト調のキャラと風景写真を自然にコラージュすることができています。

さらに、できた画像を読み込ませて「キャラクターの背景を月面の写真にしてください。背景に青い地球が浮かんでいます。光や影が自然になるようにしてください」と指示すると、このような画像をぱっと出すこともできます。元画像のオレンジ系のライティングの影響もまったくなく、宇宙空間らしい色温度に調整できていますね。

背景の一括変更だけでなく、一貫性を保ったアングル変更もかなり自由にできるようになってきています。こちらの画像はローカル環境(ComfyUI)でQwenImageEdit2511を使ってカメラアングルを変更したものですが、家具の配置やカラー、ライティングなどを保ちながら、キャラクターも含めて別アングルを生成することができています。

今回の特集はここからさらに踏み込んで、漫画やイラストに使う「空間」をイチからデザインし、別アングルを簡単に量産することで、キャラの背景として気軽に使い回すことができるかどうかを検証することにしました。具体的には、QIE2511のアングル回転技術を使ってキャラLoRAを作る特集で冒頭だけ作ったこちらのマンションの内装作りをテーマに、各種実験を行ってみます。

<一貫性のある内装を再現するには?>
このときの特集でもNanoBananaProを使って背景を生成してみたのですが、簡単なテキスト指示だけだと、玄関ドアを開けるといきなりリビングに突入するというありえない間取りが出てしまいました。1枚絵ならまだしも、この例ではコマ割りにキャラだけを配置した画像を与えて背景を一発描きさせているので、NanobananaProといえども各コマにふさわしい背景を配置するのは簡単にいかないようです。

もちろん、NanoBananaProはプロンプト指示だけで破綻のない背景を生成することができるわけですが、生成するたびにマンションの外観や部屋の内装が変わってしまうのでは意味がありません。そんなときに、こちらの投稿を拝見したのが今回の検証のきっかけでした。
ドラマに登場する背景を「間取り」から作るという興味深い発想。かつ、立体模型を間に挟むことで、しっかり生活感のあるリビングルームを生成することができています。これをイラストや漫画でもできるなら、かなり革命的に感じます。さきほどの漫画では、少なくとも玄関・リビング・夫婦のベッドルームは複数コマに登場することになりそうなので、さっそくこのやり方を応用してそれらの部屋をデザイン・再現できるか試してみました。

2.舞台の「間取り」を作る
今回の舞台は何の変哲もない新婚夫婦のマンションであればよいのですが、頭の中が外国人であるNanoBananaProに「マンション」とだけ指示すると謎の洋風豪邸を出してきてしまうことが多いので、「千葉県内の夫婦向けマンション、2LDKの間取図を作ってください。ベッドルームと書斎。リビングキッチン」と少し具体的に指示してみました。
こちらはGemini3.0で指示したもの。

「東京海…?」となりますがとりあえずスルー。
こちらはGeminiではなく、FreepikでNanoBananaProに直接指示したものです。

一番ましに見えるのはこちらでしょうか。左下のスタンプいる?とかトイレが浴室のそこ?とかが気になりますが…。

ここは、Gemini3で作ったこれが一番イメージに近いので、これで進めてみます。あれこれ修正したいところですが、ここであれこれ手間が掛かるようだと絶対実践では使わないので、「ポン出しでもサクッとできる」やり方かどうかを確かめていきます。

さきほどのドラマの作例ではここから立体模型にしていくシークエンスを挟むのですが、たぶん漫画制作でそこまではできない(手間を掛けられない)ので、一発でここから実際の室内風景を出していきます。ただし、いきなり漫画調やイラスト調にするとさきほどのように間取りがおかしくなりそうなので、いったん写真風で出力することで正確性を担保したいと思います。
指示:4:3の横長画像。画面を四分割し、こちらの間取りを参考に、それぞれ以下の写真を生成してください。カメラは全てアイレベル、水平です。「玄関ドアを背に、西に向けて廊下を通してリビングを見るカット」「リビングの入り口から、西南方向へ室内を一望するカット」「リビングのソファをテレビ側から大きく捉えたカット」「寝室のベッドを大きくとらえたカット。北西方向」

Gemini3に指示してみると、こちらの画像がでてきました。1枚目の玄関がちょっと奥過ぎた(リビングまで入ってしまった)のを除けば、おおむね狙った通りにできていますね。また「右から左へ」などと指示するとAIは間違えがちなのですが、間取りをもとに東西南北で指示しているので、正確に指示が通っているように見えます。

ただし、これではいくらなんでもモデルルーム調すぎて、とても一般のご夫婦がお住まいの部屋には見えませんね。こちらはFreepikで同じ指示をした結果ですが、似たようなモデルルーム風になってしまっています。

これは、「千葉県内の夫婦向けマンション」という情報をプロンプトに入れ忘れていたのが原因。生活感のある部屋にしてほしいので、情報を加えてやりなおしてみます。
以下が新しいプロンプト。太字部分を修正しています。
指示:画面を四分割し、入力した間取りを参考に、それぞれ以下の写真を生成してください。千葉県内の夫婦が住む一般的なマンションを写したドラマのワンシーンです。室内は家具や家電などがあり、清潔ですが生活感がうかがえます。カメラは全てアイレベル、水平です。「玄関。靴脱ぎ場から西に向けたカットで、奥にリビングが見える」「リビングの入り口から、西南方向へ室内を一望するカット」「リビングのソファをテレビ側から大きく捉えたカット」「寝室のベッドを大きくとらえたカット。北西方向」

なぜか「Genkan」などと文字が出てしまいましたが、生活感は再現できました。なんだか、本当に知らない人の家に上がり込んだみたいでどぎまぎします。
枕とクッションがやたら多かったり、玄関(靴脱ぎ場)がなんだか妙なのはNanoBananaが「米国産」だからでしょう。面倒ですが「枕は二つ」などと細かく指定するしかありません。

何セットか生成して細部を観察してみると、東西南北で指示したアングルが全然違っていたり、カメラアングルごとに家具の位置が矛盾していたりといったミスは少なからずあるようでした。
とりあえず、1枚4カットずつありますので、いくつか拡大して各部屋の候補を選んでみます。まず、ベッドルームで比較的正確そうに見えるのはこちら。

リビングはこちら。比較的破綻が少ないと感じましたが、最初に作った間取りと見比べると、全然違ってしまっていますね。あまり間取り参考テクニックは再現性がなさそうです。

玄関は、奥にリビングが見える関係でこちらにしました。が、これも最初に作った間取り画像とは構造が違っています。

間取り図からすると、廊下の左右にはそれぞれ書斎とバス・トイレにつながるドアがあるはず。玄関ドアにも団地風の新聞ポストがついていたり、玄関ドアの開く方向が内開きでドアロックも逆だったりと、ちょっとイマイチな内容でした。
正直、ここまでの生成結果を見ると、間取り図をはさんで生成したにしてはイマイチな内容ですね。これなら、間取図を作らずにいきなり「画面を四分割し、それぞれ以下の写真を生成してください。千葉県内の20代夫婦が住む一般的なマンションを写したドラマのワンシーンです。室内は家具や家電、本などがあり…」と指示した結果と大差ないように思えます。
ちなみに、こちらは全く同じプロンプト・間取り図をNanoBanana2で生成してみたもの。文字のレンダリングが自然になり、生活感の表現などは悪くありませんが、やはりソファの背後が壁になっていたり空間になっていたり、間取り通りの一貫性が保てていません。

間取り図、いらない説
ここまでの検証では「間取り図、あんまり意味がないのでは?」という感触です。そこで、今度は間取り図を参照させず、NanobananaProとNanoBanana2にそれぞれ以下のように指示してみます。(つまり純粋なtxt2img)
指示:画面を四分割し、それぞれ以下の写真を生成してください。千葉県内の20代夫婦が住む一般的なマンションを写したドラマのワンシーンです。人物は写さないこと。室内は家具や家電、本などがあり、清潔ですが生活感がうかがえます。カメラは全てアイレベル、水平です。「玄関ドアを背に、西に向けて廊下を通してリビングを見るカット」「リビングの入り口から、西南方向へ室内を一望するカット」「リビングのソファをテレビ側から大きく捉えたカット」「寝室のベッドを大きくとらえたカット。北西方向」
<NanobananaProの生成結果>

玄関ドアは相変わらず団地風ですが、ソファセットとダイニングテーブルの位置関係はさほど矛盾していないように見えます。いずれにせよ、間取り図を挟むのとやはり大差ない結果に思えます。
<Nanobanana2の生成結果>

こちらは家具のデザイン自体は一貫性があるものの、ソファと掃き出し窓の位置関係がおかしくなっていますね。生成結果はもちろんガチャ次第ではありますが、Proと2でそこまでビビッドな違いは今のところ感じられません。
ここまでの検証結果をまとめると以下のようになります。
①NanoBananaProは家の間取図が作れるが、それを基にした各部屋の正確な生成はまだできない。
②現代日本風の室内を作ると、欧米と習俗が違う部分の描写はやや怪しくなる。
③間取図をはさまず、いきなり4分割画像で室内を生成したほうが手軽。ただし、位置関係はそこまで正確にならないため、実用的な背景を作るにはある程度プロンプトを書き込む必要がある
いったん間取り図テクニックは見送るとして、ではどのようなプロンプトで4分割画像を生成したら実用的な背景にできるかを次に検証してみます。







