
こんばんは、スタジオ真榊です。今回は、先日公開したイカサマ麻雀ゲーム「鬼怒川さんが振り込むはずはない」を題材に、AIエージェントとゲームを作るやりかたを分かりやすくまとめてみようと思います。
「AIエージェント超入門」で紹介した通り、このゲームの作り方はひたすら私がプレイしては文句を付け、バグを直してはまたプレイする、を繰り返すド根性開発です。最新モデルに優れたプロンプトを入力すると、素晴らしい作品が一撃で完成するようなワンショット開発からは程遠いので、参考にならないかもしれませんが、2026年夏時点の技術でAIゲームを発案からデザイン、テストプレイ、デバッグと進めて完成させた一つの記録として残しておきます。
記事中ではゲームの内容(ラストバトルに勝つための仕掛けやご褒美の衣装、エンディングなど)に触れますので、ネタバレ前に遊んでおきたい方はこちらからどうぞ。インストール不要で、ブラウザからそのまま遊べます!
記事前半では開発開始から完成までの流れを紹介し、後半の「鬼怒川さん麻雀完成までの全記録」ですべての指示を掲載しています。どんなプロンプトを入力したかはできるだけそのまま画像にして掲載していますが、個人情報に当たる部分などは一部(略)などとして省略しています。

1.最初の指示とダメ出し
鬼怒川さんはもともと、18禁ADVゲーム「鬼怒川さんが催眠に掛かるはずはない」のヒロインとしてデザインしたものです。ADVゲームはシナリオやゲーム性などまだまだ工夫しなければならない点が山積みで、いまだに開発中なのですが、作中で作った立ち絵や音声を流用して、もっと小粒でブラウザでも楽しめるゲームを一度完成させたい、と考えたのが今年7月ごろでした。

▲鬼怒川さん麻雀のスピンアウト元(開発中)
Codexのログを見てみると、麻雀ゲームの開発を始めたのは2026年7月29日。先にChatGPTのChatモードで作ってもらった以下のプロンプトを、GPT-5.6(思考量:極高)のCodexに渡したのが始まりでした。


この時点で既に、「ヒロインと二人打ち麻雀をして、イカサマを使いながらご褒美を賭けた三番勝負をするゲーム」という骨格は決めていました。なんとなくイメージしていたのはプロンプトにもある「対戦ホットギミック」。往年のゲームセンターでは定番だったご褒美シーンありの麻雀ゲームで、これがやりたくて麻雀のルールを覚えたという諸兄もいらっしゃるのではないでしょうか(私はそう)。

▲「対戦ホットギミック アクセス雀 for Nintendo Switch」のプレイ画面(https://store-jp.nintendo.com/item/software/D70010000009810 より)
初期段階の構想では、鬼怒川さんもプレイヤーも「ダメージ」が三つ溜まると負けるルールで、鬼怒川さんが「天和」(配牌時点でアガっている役)をガンガン放ってくる内容でした。しかし遊んでみると非常にストレスフルだったので、改修するうちにだんだん別のゲームになっていったわけですが、コンセプトは当初から「お互いイカサマを駆使する、全くフェアではないエセ麻雀ゲーム」であり、「フェアな麻雀でないことがつまらなさに直結しない」ようなつくりにすべく、勝ち方・負け方・見せ方を何度も考え直すことになりました。
鬼怒川さんの設定や立ち絵・音声といった素材は既に「鬼怒川さん催眠」でだいたいできあがっていましたので、Codexに作ってほしいのは主に麻雀ゲームの部分です。単に麻雀のルールを実装するだけでなく、どういう画面構成にしてほしいかも一緒に伝えました。
ただ、この時点でさっそく失敗したのは「最初に画像生成で完成予想図を作って渡さなかった」ということ。こちらの特集でサイト開発をしたときには、最初に完成予想図を画像生成するやり方を紹介していますが、このときはそのノウハウがなかったのです…。

2.麻雀として遊べる画面にする
7月30日にCodexが作ってきた試作画面がこちら。牌は並んでいますし、鬼怒川さんもまあ…「いる」のですが、可読性が低いというかなんというか。肝心の牌もテキトーないたずら書きのような見た目でした。なんとなく画面の配置だけは間違っていないのですが、ともかく字が小さいしスペースが余りまくっているし、という感じです。

ちなみに、これはブラウザで動くゲームとして作っており、当時は画面サイズに応じて各要素の大きさが変わる作りになっていました。そのあたりも全く知識がなかったので、Codexが想定しているサイズと私の見ているサイズに齟齬がある状態で開発がスタートしてしまいました。
<失敗から学べたこと>
あとから考えてみると、PC向けなのか、スマホでも遊べるのか、iphoneアプリにもできるようにするのかくらいはユーザー側が確定してから開発を始めるべきでした。例えば「ブラウザの表示領域1280×720、ズーム100%を基準にする」「Windowsのウェブブラウザ向け」などと指示しておけば、だいぶ混乱は抑えられたように思います。
あとは画像生成でも手書きでもよいので、鬼怒川さん、卓、14枚の手牌、捨て牌、台詞、ボタンを、牌や絵が見分けられる大きさで最初に確定し、エージェントに伝えておけばよかったですね。また、「直しました」で終わらせず、Codexが見ている画面のスクショを一度は出させておくべきでした。そうすれば、見ているものが異なっていることにもっと早く気づけたと思います。

とはいえこの時点ではそうしたことを何も理解していなかったので、とりあえず普通の麻雀ゲームのような見た目にしてもらうところからスタート。下の画像は指示に添付したスクショです。


次に気になったのが、立ち絵の大きさと空間の使い方。せっかく鬼怒川さんと対戦しているのに、全身を小さく収めてしまうので顔や表情がよく見えず、牌と同じように、こちらも拡大してもらうことにしました。

画面には空きがあるのに、見たいところは小さいままなので、スクショを渡して具体的に指示して修正していきます。

アガったらちゃんと気持ちよくしたい
麻雀で一番気持ちいいのは、苦労して作った手をアガる瞬間です。初期はそこをあっさり自動処理で流されてしまう仕様だったので、自分でクリックしてアガれるボタンを出すように依頼。このあたりは、「麻雀格闘倶楽部」や「雀魂」「セガNET麻雀 MJ」などの定番麻雀ゲームで体感してきたので、イメージを具体的に伝えます。

ツモやロンのときは分かりやすくボタンを出し、「ドラ」が来たら輝かせ、リーチには派手な演出を付けるよう注文。一方で、見たら分かることをいちいち文章で説明するAIのおせっかいな表記を削っていきます。


必要な数字やボタンは小さいのに、別に読みたくない説明が大きく場所を取っていると、対局画面として落ち着きません。AIにキャラクターのポスターなどを作らせるときもよくあるのですが、こういう「どうでもいい文章でスペースを埋める」AIの悪癖をきちんと却下していかないと、メリハリがなく散漫な「AI Slop」ができてしまいます。
こちらはCodexとあれこれ悩んで作ってもらったド派手な和了エフェクト。静止画で見るとやりすぎですが、ゲーム画面で一瞬表示して動かすにはこれくらいド派手さが必要になります。

<役の判定ミス>
ここまでである程度プレイできる見た目になってきましたが、麻雀そのものの処理にはおかしなところが無数にありました。こちらはツモスー(※ツモで四暗刻が完成している)のはずなのに、三暗刻と判定された場面です。


こうした不具合は、とにかくテストプレイしてみないと気づけないもの。基本的に異常な現象を確認したら、スクショを添えてデバッグを頼むことの繰り返しです。役を直したら今度は文字が小さい、ボタンが押しにくい、と気になるところが次々に出てきて、このあともプレイするたびに無数の注文を付けるはめになりました。
麻雀ルールや実装すべき役も「AIならちゃんと分かっているだろう」と信じていましたが、後の方になって地和や小三元が実装されていないことが判明。「たぶん大丈夫」で進めるのではなく、ちゃんとサイトなどの情報を参照させて「役構成はこれ」「判定はこれ」と指示しないといけませんでした。いまなら分かるのですが、こうした機械的な部分の修正は、モデルにテストプレイを任せてバグや実装漏れをつぶしていったほうが明らかに効率的なはずです。
今回の開発は主にCodexの「GPT 5.6」とClaudeCodeの「Opus5」で行いましたが、後発のAstraやOpus5.5といったモデルなら、もしかするともうこんな苦労をしなくて済むかもしれません。ただ、人間(私)がプレイして「つまらない」「理不尽」「何が起こったか分からない」と感じた部分をコツコツド根性修正していったことが、自然で気持ちいいゲームに近づけるのには有効だったような気もします。

3.ルール固めとクライマックスの工夫
実装3日目(7月31日)です。小さい手でさっとアガるのを繰り返すゲームになると、鬼怒川さんとのタイマン勝負としてあまり面白くないことが分かってきたので、ゲームのルールを「満貫縛り」(8000点以上ではないと和了れないルール)にすることにしました。

(※クイタンというのは2~8の牌だけで手を作る「タンヤオ」を、ポンやチーしてさっさと和了る戦略です)
指示は上記のようにシンプルですが、プレイヤー・CPU側双方でアガリ判定のシステムが根底から変わるので、ゲームプログラムとしてはかなり重大な変更です。

とはいえ、満貫縛りにしたことで「イカサマを仕掛けてくる敵をかわしながら、こちらもイカサマを効果的に使って、できるだけ急いで満貫以上の手を作るゲーム」というハードルが分かりやすくなりました。イカサマは1回使ってしまうと成功確率がガタ落ちするので、それ自体に「いつ使うか」という攻略要素が生まれますし、プレイヤーが追い詰められたときにイチかバチかのイカサマに賭ける楽しさもあります。
満貫縛りのルール変更をきっかけに、このゲームの攻略性や楽しいポイントがおおむね固まってきました。あとは、それをド派手な演出によってどれだけ倍化できるかが問われます。
<脱衣麻雀ではなく「コスプレ罰ゲーム」に>
あれこれ直しているうちに、9月23日に東京・浜松町で開催される「生成AIなんでも展示会 vol6」で展示したいなという気持ちが沸き起こってきました。当初は脱衣麻雀にしようかなと考えていましたが、子供さんも来場する全年齢イベントであることに鑑みて、まだ作っていなかったご褒美シーンを脱衣ではなくコスプレに変更することに決めました。

ご褒美コスチュームを「メイド・バニー・魔法少女」の三段階にしたのは、完全に趣味です。勝つごとに露出度やセクシーさが尻上がりになり、カラーも派手になった方がご褒美感があるなと考え、この順番にしました。鬼怒川さんのリファレンスシートは既に用意してあったので、これをChatGPTに入力して、さまざまな衣装バリエーションにしてみました。

こちらが第1戦勝利時に表示されるメイド服の第一案。最初のご褒美シーンなので、露出度低めのクラシックタイプです。

勝ったあとのご褒美を、何事もなかったようにさらっと見せてしまうとつまらないので、台詞と見せ方を考えて指示していきます。「3戦やって着替えて終わり」だと味気ないので、クライマックスの3戦目にだけ謎解き要素を入れることを思いついたのもこのときです。

プレイヤー側の天和でいきなり決着する展開も禁止にしました。イカサマ麻雀は相当気を付けないと「理不尽ゲー」になってしまうので、できるだけゲーム性を感じられるようにあれこれ試行錯誤しました。
<何を捨ててもロンされるなら>
第3戦をどのようなシナリオにするかはかなり悩みました。AIはいくつか「こういうのはどう?」と提案してきましたが、どれもつまらないのでボツ。せっかくイカサマ麻雀ゲームなのですから、まずは「鬼怒川さんが三戦目では毎回ダブルリーチ(第1巡目のリーチ)になり、こちらが何を切っても必ず一発ロンしてくる」という絶望的状況を作ることにしました。

▲3戦目は100%ダブルリーチする上、何を切っても和了られる
手元の牌はすべて鬼怒川さんに和了されてしまうので、これを打破するには、あたり牌以外の牌をどこかから持ってこなければなりません。よって、鬼怒川さんのダブルリーチの一発目の捨て牌を選ぶ際に「ぶっこ抜き」を使うのが正解、というシナリオにしました。ここまでアイテムなしで使えるイカサマ「ぶっこ抜き」で手牌と山の牌を入れ替えれば、その仕掛けを破って、普通のダブルリーチ相手の勝負へ戻る仕組みとしました。

ところがこれを実装してみると、仕掛けをどう破ったかプレイヤーに分かりづらいまま通常の対局に戻ってしまうので、正解に至ったカタルシスが味わえないことが判明しました。そこで、このような会話シーンを入れて、きちんと経緯を説明することに。対局中にこうした自由なストーリーシーンを挟めるようにしたので、ここからは劇中のさまざまなやりとりにいろいろな演出を入れることが可能になりました。

▲「神速のぶっこ抜き」でイカサマを打破すると、会話シーンが始まる

4.フルボイス化と台本の書き直し
次は音声についてです。全台詞をしゃべらせるだけなら、PC内には音声生成AI「Irodori-TTS」で生成できるローカル環境がありますので、エージェントに「Irodori-TTSを使って全部台詞付けておいて」と指示すればなんとなくフルボイスになります。(Irodori-TTSについてはこちらの記事を参照のこと)
ただ、その台詞が鬼怒川さんらしいか、その場面に合っているか、麻雀用語(立直や聴牌)を正しく読めているかは、こちらで一つずつ確認しないとなりません。実際にプレイしてみると案の定、麻雀用語をあちこち誤読していることが判明。そこで、まず現在仮置きしている台詞を全部洗い出して私が全て書き直し、Irodori-TTSで音声を三つずつ生成してもらうやり方で進めていくことにしました。

Irodori-TTSで音声生成するときは、同じ文章でも、Seed値によって言い方や間の取り方はまちまちになります。1音声の生成にはわずかな時間しか掛からないので、1つの台詞を3パターンずつ生成してもらえば、それを専用画面で私が視聴して、よいものを選べます。
こちらがエージェントが作ってくれたボイス視聴画面。私は上から再生しては「Aを採用」などと選択し、全部だめなら「3案ともボツ」を選ぶだけです。とはいえ、鬼怒川さんのセリフは200件以上あるので、ひととおり聞くだけでも大変な時間が掛かりました…。

<台詞を自分で直せるように改定>
ところで、ゲーム画面上の台詞欄ではリーチが「立直」と表記されるのですが、そのままIrodori-TTSにプロンプトとして渡すと「私のリッチョクをかわすとはな…」のように読み上げられてしまいます。よって、そういう誤解がありそうな漢字をカタカナで指示するようにプロンプトで伝えたのですが、なぜかCodexは「りーち」と書いてしまい、Irodori-TTSが混乱して変なイントネーションになってしまう現象が起こりました。

また、Irodori-TTSは非常に短い言葉だと間延びしてしまうことがあり、「ロン」「チー」「テンパイ」のようなひと言は苦手だということが分かりました。そこで、ゲームでは「ロンだ。その牌は通らないよ」のようにひとつづりの台詞にすることで回避しています。今から考えると、「ロン。ロンだ。ロンする。ロン」のようなセリフを生成させておいて、一部を切りとるやり方でも良かったかもしれません。
立直は「りーち」から「リーチ」に、配牌は「はいはい」ではなく「はいぱい」、当たり牌は「あたりパイ」から「あたりハイ」に書き換えていきます。特に「牌」という字は、前に来る言葉によってパイになったりハイになったりするので、人力によるオールチェックが必要でした。

指示の後段では、ご褒美シーンを豪華に見せる工夫も伝えています。いったんウィンドウを消し、ご褒美画像をアップにして足元からゆっくりパン、そのあと全体を表示する演出で、ちゃんと絵を眺めるための時間を作ります。(この時点ではご褒美イラストができていなかったので、適当な16:9の画像をかませておいて、あとで画像を用意しました)
ここまでが、7月末から8月初めのCodexでの開発。最初の指示から数日で土台はできましたが、一般向けの公開までには、まだ素材や演出の仕上げが必要な状態でした。

5.Claudeで素材と公開準備を進める
このあたりからは同人誌の作業がえらいことになってしまったので、しばし開発は中断。次にまとまったログが残っているのは9月20日、なんとイベント開催の3日前です。しかもこのとき、私はCodexの使用残量もリセット権も完璧に使い果たしており、私の手に残っていたのは9月6日にサブスク契約を切ったClaude Codeだけでした。

サブスクは切っていましたが、月末のプラン更新時期まではMaxプランを使える環境が残っていました。残り3日しかない状況で、出戻り女房(?)のようにClaude Codeに泣きつき、完成を急ぐ泥沼開発。いよいよ盛り上がってきました。
このとき、ちょうど公式サイトを整備していたところだったので、最初にClaudeに聞いたのは「このゲームを公式サイトで遊べるようにできるか」ということでした。

「できるよ」という返事だったのですが、まだタイトル画面もテキトーな状態だったので、まずは「タイトル画面」や「ルール画像」、背景と立ち絵を完成版にすべく画像生成を自分で行いました。こちらが、タイトル画面に使うために渡した画像。Codex残量がなくてもChatGPTは問題なく使えるので、普通に画像生成で作りました。

指示はこんな感じ。

画像には既にゲーム名が入っているので、別のタイトルや仰々しい煽り文を足されないよう念押しします。こちらが最終的なタイトル画像。上の画像と鬼怒川さんの顔を見比べてもらうと分かるのですが、最後にADetailerや加筆できれいに仕上げています。

ビジュアル面を総見直し
さて、タイトル画面から「ルール確認」を押すとこのゲームのルールが確認できるのですが、その時点でルール説明画面はこんな感じでした。

うーん、ダサい!
まったくビジュアルな出来ではないし、下部に至ってはネタバレ以外の何ものでもありません。
タイトル画面のボタンデザインもイマイチだったので、それとあわせて修正させました。

プレイヤーに最初に伝えるべきなのは、三番勝負であること、満貫縛りであること、イカサマがバレたら負けること程度でOK。アイテムが手に入る仕組みは説明しても、何が出るかまで先に教えてしまうと楽しみが減ります。第三戦の仕掛けも、初めから説明してしまったら謎解きになりません。
Codexには任せず、ルール説明の画面はこちらでChatGPTを使って画像生成で作ることにしました。こちらが指示したときの様子。

n=10(10枚同時生成)と指示しているので、このような候補が10枚出てきました。ゲーム上のUIはすべてコーディング(CSS)で作るのではなく、画像生成で作った方が画面上はきれいに見えることが多いですが、文字部分が画像になっていると気軽にルール変更できない面倒さもあるので、一長一短ではあります。

<背景画像もブラッシュアップ>
同じように、会話シーンやご褒美シーンで使う背景画像もChatGPTで作って渡しています。イカサマ露見やハコテン(0点を割る)でゲームオーバーになった時に行くベッドルームは、1枚目を参照させて生成しました。


ただ、上下を見比べると、リビングから寝室に続くドアノブが左右逆開きになっていることが判明。ChatGPTでもインペイントでも直せますが、このときはPhotoshopで使えるNanoBanana2で修正しました。(他の部分が再生成されるのを防ぐため)

<立ち絵も総点検>
ゲーム側の開発がだいぶ落ち着いてきたので、ビジュアル面の仕上げに掛かります。
鬼怒川さんの立ち絵には基本的に「WAI Illustrious SDXL+鬼怒川さんキャラLoRA」で作り、それをChatGPT(GPT Image 2.5)に参照させて、衣装やポーズといったバリエーションを作っています。SDXLで作ると顔立ちに統一感が出る代わりに、一つ一つ衣装の細部が変わってしまうので、立ち絵は基本的にチャッピーの仕事。しかしチャッピーはチャッピーで、画像を編集したときに出る独特の「色ムラ」や顔立ちの微妙な変化が気になります。
よって、今回の作品に使ったキャラクター画像は全て、「ヒロインのキャラLoRAを適用したSDXLで基礎立ち絵を4パターン作り、それをChatGPTに参照させて作った立ち絵やご褒美画像のバリエーションをMagnificでアップスケールし、おかしい部分はクリスタで手修正、さらにPhotoroomで白背景部分を透過する」という面倒なフローで仕上げました。この過程によって、いかにもチャッピーで作ったような痕跡はだいぶ軽減できたように思います。
例えばこちらの立ち絵は一見よさそうなのですが…

拡大すると右目(向かって左)の上に髪の毛の影のような線が入っていて、低品質に見えます。目の中の溶け感も問題なので、こういう部分は時間の許す限りできるだけ加筆で直しました。

<音声も新しく録り直し>
音声は、この段階でIrodori-TTS 4.1 animeを使ってかなり録り直しています。これは主に「ロン」「ツモ」「チー」「ドラ」といった短い一言の発音の違和感がぬけなかったため。

特に「ドラ」は「ドラ↑」ではなく「ドラ↓」と下がる発音になってしまうことが多く、「銅鑼」というプロンプトに直して発音をコントロールする苦肉の策を強いられました。
その後の台詞のチェックで、着替える前に「次はメイド」「今度はバニー」と先に衣装を言ってしまう余計な台詞が勝手に追加されていることが分かり、そこもボツに。

AIが「良かれと思って」やってくるこういう破壊工作をいかに押しとどめるか、かなり苦心させられました。
6.音声と立ち絵を人間が選ぶ
9月21日、イベント二日前。ログを見ると、音声の採用とボツを繰り返している様子が見られます。例えば「牌」を別の漢字に置き換えて読ませたせいで、それまで間違っていたところは良くても、前は正しく読めていたところがおかしくなることがあり、泥沼の様相を呈していました。

麻雀を知っている人には普通の読みですが、生成モデルが苦手な言葉が案外多く、苦労は絶えませんでした。読みは合っていても今度は発音がおかしかったりするので、聞いては直し、聞いては直しの繰り返しだったように思います。
<デバッグモードを追加>
ご褒美やエンディングシーンがうまくいっているか確かめたいとき、三番勝負を毎回やり直していては、かなりの手間になってしまいます。そこで、お目当てのシーンに直で行けるデバッグモードを注文しています。

これはあるキーを押すと左下に表示される開発者専用のUIで、プレイしながら立ち絵を別のものに差し替えたり、強制勝利したり、エンディングに直で飛んだりすることができるようになりました。これがあるとないとでは全く作業の進捗が変わるので、かなり初期に作っておけばよかったなと思います。

<立ち絵の顔面一斉修正>
立ち絵はこの時点で既に全部そろっていたのですが、どうも顔に統一感がなく、最終的に「ADetailer」(顔などを検出して描き直す仕組み)を使ってSDXLで再生成したいところでした。ただ、透過済みの画像をADetailerすると再びその画像のアルファチャンネルは失われてしまいます(白背景に戻る)。いまある立ち絵はせっかくアップスケールや背景透過などを施してあるので、透過部分はそのままに顔だけを統一できるやり方が必要になりました。
そこで、このようにClaudeに相談。

すると、「今既にあるADetailerの改造版をちょっといじれば、アルファチャンネルをいじらずにADetailerできるよ」との返答が!これは朗報に食いつくおっさん。

改造版というのは、このとき作ったAnima対応のADetailerです。このときは自然言語でインペイントできるものを作ったのですが、これをさらに改造すればよいとのことでした。
というわけで、このように透過部分を保護したまま顔だけをADetailerできる拡張機能が土壇場で降臨。タイトル画面なども含めて、鬼怒川さんの顔面をすべてSDXLでADetailerし、顔立ちの統一を図ることができました。
<台詞と表情を合わせる>
次に作ってもらったのが、台詞ごとにふさわしい立ち絵を選ぶためのUIです。その時点でもだいたい「真顔・笑い・赤面・怒り」といった表情は9割がた正しいものが選ばれていましたが、より良いゲーム体験のためには、残り1割の不自然な組み合わせを人力で発見し、差し替える作業が必要でした。

残り1割とはいえ、通常衣装+3衣装ある台詞と立ち絵の組み合わせ全部を一つずつ確認していたらイベントに間に合いません。この時点で日が変わってイベント前日になっていましたので、私がいくつか選んだものを手がかりに、残りはClaudeに判断してもらいました。

あと、まだ解決されていなかったのは文字の小ささ。アガリ画面では特に小さくて読みにくいので、また大きくするように頼んでいます。


▲キレるユーザー。泣くClaude
入れたい情報が増えると、画面を広げるのではなく文字を縮めてしまうのが、どうもAIの癖のようです。プログラムとしては全部収まっても、人間には不快で苦痛。自分の目と耳で確かめる時間が想像以上に長く掛かりました。

7.Codexの改修を戻し、Claudeへ引き継ぐ
ここまでClaudeで進めていましたが、9月21〜22日にはClaudeの契約もついに尽き、Codexのクレジットを追加購入してレビューや仕上げを頼んでいます。ところが今度は、Claudeがうまく作っていたものをCodexが破壊してしまう現象が発生。泥沼がさらにもう一段深まります。
9月22日にCodexへ頼んだのは、今の構成を保ちながら品質を上げること。ところが、全体を改修してもらうと、これまで遊べていたところまでおかしくなってしまいました。こちらがそのときの画面で、妙な空きスペースができたり、イカサマ説明欄の仕様が変更されたりして、表示が崩れています。

さらに、アガリ時の仕様もこのように変更されてしまいました。画面全体を暗くしてしまったので、ツモるべきかどうかプレイヤーがそもそも判断できません。


最終的には私が「もう無理!」となり、いったん改善前へ戻すことに。このときCodexに指示したのは、全体的な演出のパワーアップだったのですが、その時決めたロールバックの呪文を唱えて、全部なかったことにしました…。この時点で展示会の前日の夕方です。

<良かった変更だけを取り出す>
とはいえ、このときCodexが考案したパワーアップ案の全てが悪かったわけではなかったので、アガリのボタンや文字の選択防止、着替えの効果音など、良かった部分だけを再現するよう改めて指定しています。例えば鬼怒川さんが着替えるときのシュルシュルした衣擦れ音は、鳴ればそれで良いのではなく、ご褒美画像が出るまでの待ち時間に合っていてほしいところ。鳴る時間が短すぎたので、一つ前の台詞から二ターン鳴らして、画像が出たら止めるようにしました。

こちらはクリックするときに文字が選択状態になってしまう不具合。普段のネットサーフィンなら普通の挙動でも、ゲーム中に発生するのは邪魔ですね。

結局Codexによる総仕上げはほぼ失敗に終わったので、Claudeに作業を戻すことにしました。Codexには、このチャットで何を変えたか、何に失敗したか、直したほうがよいと分かったことを、文書へ残すように依頼。

Codex側で引き継ぎます。

Codexへ引き継ぎを頼んだのがイベント前日の19時47分、Claudeへ渡したのが20時4分です。このあたりでもうデッドラインは見えてきていて、あとは最低限恥ずかしくないよう細部を詰める段階にきていました。

8.展示会とWeb公開
あまり良い写真がなく恐縮ですが、展示会の会場ではノートPCに大型ディスプレイをつなぎ、こんな感じで来場者に遊んでもらう予定でした。

まずは、その環境で画面がきれいに表示されるかを確認します。普段の開発用PCでは大丈夫でも、展示用のPCでは見え方が変わることが考えられたからです。

会場展示ではお客さんに直接PCをいじってもらうので、余計な画面が開かないようにしつつCopitaやNoteBinderといった展示用アプリを試せるデモ画面を作りました。ところが、最初の画面に戻るボタンが麻雀の操作に重なってしまい、リーチができなくなる問題が発生。表示も家のPC、ノートPC、会場用モニタでアスペクト比が違い、おかしくなっていました。これらを順次直していきます。


こちらが展示直前のスクリーンショット。せっかく会場で遊んでくれた方をがっかりさせたくなかったので、最後の最後までプレイしてはバグを直していました。

ただ、展示中にプレイしていただいているとき、おかしな挙動が一度だけ発生してしまいました。プレイヤーがテンパると、鬼怒川さんこちらの捨て牌を勝手にいじって「強制フリテン」にされる挙動があるのですが、そのあと和了牌をツモっても「ツモ」ボタンが出ずアガれないというバグでした。

「フリテン」というのは捨て牌などの条件でロンができなくなる状態のことですが、自分でツモった牌でアガることはできるルールなので、こちらも修正を依頼。イカサマを入れる前はできていた普通の操作が、仕掛けを入れたことで混乱してしまったのが原因でした。
<サイトから遊べる入口を作る>
展示会はなんとか終わりましたが、会場では正直、期待したほどプレイしてもらえなかった本作品…。よく考えたら公衆の面前で人妻強制コスプレイカサマ麻雀ゲーム(フルボイス)を遊ぶのはなかなかなハードルでしたので、遊んでくださった方には「きょうあすには公式サイトで遊べるようにします!」と約束し、ローカル用からウェブサイト用への改造を進めました。
9月24日の夜、最後にポンの音声を差し替えたところで、ゲーム公開と公式サイトへの告知を依頼。7月末からやってきたゲーム開発ですが、これでようやく一区切りがつきました。



9.イカサマが失敗する面白さ
めでたしめでたし…としたいところですが、Web公開後もゲームで遊んでいると、ところどころおかしなところに気付いてしまいます。このゲームには「手牌透視」というイカサマがあるので、プレイヤー側からは鬼怒川さんの手が見えるのですが、鬼怒川さんがまともな打ち方をしていなった場合すぐ露見してしまうので、あらゆる場面で手牌を透視して、おかしな挙動にならないかチェックすることにしました。
このゲームでは「たとえ役なしでも、テンパイにたどりついたらドラ爆弾+ぶっこ抜きを選び、リーチ一発ツモドラ2にできる」という必殺技があるのですが、これが100%決まると面白くないので、一定確率で鬼怒川さんに察知される演出を追加しました。これは、リーチ+ぶっこ抜きで狙った牌が来ない現象(※鬼怒川さんが立直宣言牌をすり替えて強制フリテンにしたときに起こる)を発見したときに、怪我の功名で思いついた演出です。

「テンパイ」中にぶっこ抜きを使ってすぐツモろうとしたとき、ある確率で鬼怒川さんに見抜かれ、当たり牌が消失する仕組みです。そのときは鬼怒川さんに専用の台詞を言わせ、こちらの狙いまで読まれていたことを見せたい、と考えました。このとき、鬼怒川さんの気づきカットインもかっこよくしたかったので、イチから作り直しています。

9月26〜28日にも、場の風の扱い、アイテムを使える条件、台詞の順番、第三戦からやり直す流れなどを調整しています。画面の中で何が起きているのか分からない、という問題も続きました。こちらは、ロンできるはずなのにポンになってしまうシーン。

会場で遊んでいただいているときにも感じたことですが、第三戦の謎解きにはまだ改善の余地がありました。3戦目では何を切ってもロンされてしまうわけですが、そこで「分からん殺し」とプレイヤーが感じてしまい、ゲームを投げてしまう恐れがあったのですね。3戦目でゲームオーバーになったら、3戦目からやり直せるようにし、さらに主人公が考え直す台詞を入れて、プレイヤーが発想を変えるきっかけを作ることにしました。

ここはクライマックスなので、逆転に繋がるシーンはやはり特殊演出が必要。3戦目は謎解きシークエンスがあることに気づいてもらえず、単に理不尽ゲーだと思われてしまうのだけは避けたいところですので、このような会話シーンを後入れしました。

▲3戦目で発生する特殊会話演出

終わりに
というわけで、おおむねここまでが現在のバージョンまでに反映させたものです。7月29日に最初の指示を送り、9月23日に展示し、24日に公開告知を整えたので、途中の空白期間を抜かなければ約二か月の開発でした。

▲スタッフロール
今回のゲーム開発で人間(私)側がやった創作的寄与は何だったか振り返ると、主に以下の6点にまとめられるかと思います。
・「イカサマ麻雀三番勝負」の骨格と、満貫縛りや第三戦の仕掛けを決める
・脚本と台詞を書き、ご褒美やヒントを見せる順番を考える
・ヒロインの立ち絵、背景、タイトル、ルール画像を用意する
・生成した音声と、台詞に合わせる表情を選ぶ
・テストプレイを繰り返し、人間目線で見ておかしく感じるところを発見する
・採用する変更と、戻してほしい変更を取捨選択する
プログラミングはエージェントに任せていますが、ゲームが面白くできているか、分かりやすいUIになっているか、鬼怒川さんらしく見えるかなどは、やはり人間が確かめる必要がありました。ゲーム開発経験やプログラミング知識がなく、完璧な仕様書が書けなくても、とりあえず動くゲームを見て「ここをこうしたい」「これが足りない」と伝えていけば、少しずつ自分の作りたいものに近づけることだけは証明できたかと思います。
<このあとの全指示ログについて>
以下はFANBOX会員向けです。ログから確認できた開発関連の指示全438件を、時系列でそのまま並べました。細かい音声の選び直しまで全部読むと長すぎるので、なんとなく拾い読みしてもらえればと思います。御覧の通り全くスマートな開発とは言えませんが、これから自分のキャラクターで何か作ってみたい方の参考になれば幸いです。









