こんばんは、スタジオ真榊です。このたび、ChatGPT上で遊べる自由行動型の会話ADVゲーム「上板橋デッドエンド」を公開しました。

ChatGPTで自由行動ADVを作ろう!「上板橋デッドエンド」制作記:図版1

ChatGPTをゲームマスターとし、あらかじめ決まったシナリオとゲームルールを参照しつつ、プレイヤーが選択肢に縛られずに行動できる「真のアドベンチャーゲーム(ADV)」を目指した作品です。この記事では自分でもAI-ADVを作ってみたい方向けの「制作記兼チュートリアル」として、GPTsで自由行動型ADVを作るときの設計、YAMLへの分離、イベントCGの表示、公開時に起きたトラブルまでを詳しくまとめました。

「上板橋デッドエンド」はPlusプランから使えるGPT-5.4 Thinkingを利用して制作しましたが、2026年4月24日に最新の「GPT-5.5 Thinking」が公開され、さらに動作が安定しました。ゲーム構成自体は8000字程度のプロンプトとYAML、特定シーンのテキストでできているため、工夫すればGemini、Claudeなど別のプラットフォームでも、そしていずれはローカルでも動かすことができるようになると思います。

「上板橋デッドエンド」を作ったきっかけ

ADV(アドベンチャーゲーム)は、物語の主人公となって会話や探索、選択肢を通じてストーリーを進めるゲームジャンルのこと。コマンド選択式の紙芝居式サウンドノベルなら低予算でも作れることから、平成では「エロゲー」「ギャルゲー」という呼称で無数の作品が世に出ました。代表的なヒット作では「428 〜封鎖された渋谷で〜」や「街」、「逆転裁判」などがADVジャンルですが、最近はソシャゲ化が進んだこともあり、フルプライスのADVは縮小傾向であるように感じます。

従来のADVは、あらかじめシナリオに組み込まれた選択肢を選んで進行していくことがほとんど。マルチエンディングにすることである程度の自由はあっても、予定した物語の外に飛び出していくことはできませんし、キャラクターはあらかじめ決められたセリフを繰り返します。しかし、LLMや画像生成AIがここまで進化したいまなら、主人公の行動やキャラクターとの会話、そのときの表情などを、もはやリアルタイムに生成することが可能なはずです。

「上板橋デッドエンド」を作ったきっかけ:図版1

最終的に作ってみたいのは、もちろん「エロAI-ADV」です。エロゲー・ギャルゲーの基本はヒロインを「落とす」ことなわけですが、そのためには正しい選択肢を選ぶか、パラメータ上げなどが必要だったのが平成式。「大悪司」や「ランス」シリーズのようにゲーム要素を強めたものもありましたが、LLMを組み込めば、リアルタイムにキャラクターを口説いたり、関係性を築き上げたり、エロシーンの展開すら自分で全て決めることができるようになるのではないかと考えています。主人公が「催眠スマホ」を持っている作品で、あれこれ頑張ってヒロインを催眠に掛けたあと、瞳の色が消えたヒロインと自由に問答なんていうのも面白そうですね。

とはいえ、ChatGPTなどのクローズド型LLMでは、検閲が入るのでHな内容のやりとりは基本不可。ローカルではGemmaなどの軽量モデルなどが発達してきており、そろそろかという感じではありますが、現時点で夢の「エロAI-ADV」を作るのは大変そうです。そこで思いついたのが、ぎりぎりChatGPTでも再現可能そうな「自由選択型ゾンビサバイバルADV」だったわけです。

「上板橋デッドエンド」を作ったきっかけ:図版2

「上板橋デッドエンド」の概要

プレイヤーは、ゾンビだらけになってしまった世界でマンションに立てこもっている会社員となり、スキルとアイテムを組み合わせた「ビルド」を活かして、マンションからの脱出を目指します。ゴールはとてもシンプルで、ともかくマンションから車に乗って走り出せばクリア。ただ、その途中で何をするかは自由…というようなつくりを考えました。

私は普段Netflixでありとあらゆるゾンビ映画・ドラマを見まくっているので、このアイデアは「ウォーキング・デッド」「Sweet Home -俺と世界の絶望-」「ゾン100」「新感染」「今、僕たちの学校は…」などの名作が下敷きになっています。特に、「#生きている」というマンション閉じ込め系の韓国ゾンビ映画の影響が強いかもしれません。

ChatGPTが提案した選択肢から行動を選んでもいいし、自分の言葉で変な行動を入力してもいい。ヒロインにセクハラしても、突然踊り出しても拒否せず、ちゃんとその通りに展開することを大事にしたゲームにしようと考えました。こちらが一番最初にGPT-5.4 Thinkingに相談した内容です。

「上板橋デッドエンド」の概要:図版1

この時点では、単にこの部屋でチャッピーと遊べるかどうかを試す程度の発想でした。ところが、かなりこの返答が面白く、それなりにちゃんと遊べてしまったのですね。

「上板橋デッドエンド」の概要:図版2

「マンションの別室を探す。物干し竿を刺股のように改造する」と指示すると、ちゃんとディティールも含めて展開を作ってくれました。この時点では決まったシナリオがないので、行き当たりばったりに展開していくだけでしたが、隣室で女の子と出会ったり、上の階の男が声を掛けてきたりする展開はこのとき偶然生成されたやりとりで固まってきたものです。

突飛な行動ができるかも聞いてみました。助けを求めている隣人の女の子(このときは"真由")を突如殺害する展開も、「悪手」と言われつつも可能なことが分かりました。これで俄然、思い描いていたAI-ADVが可能になる自信がつきました。

「上板橋デッドエンド」の概要:図版3

ただ、このままではずっとマンション内やこの世界をうろうろするだけで、終わりが見えません。ゲームとしては、ちゃんとクリア条件が必要なことに気付きました。だらだら小説を生成しているだけだと飽きてしまうので、シナリオにはゲーム性・エンタメ性が必要です。ここで「ゴールは車で脱出すること」「スキルと持ち物を最初に選べる」「選択肢を選んでも選ばなくてもOK」というゲームの骨子ができました。

「上板橋デッドエンド」の概要:図版4

スキルと持ち物はLLMに提案させ、スキル6つ、持ち物6つの候補から2つずつを選ぶかたちにしました。スキルと持ち物が各1つずつだと、「組み合わせる面白さ」が足りないと考えたためです。例えば「工具箱」と「手先が器用」をうまくコンボさせることで、隠された展開に進めたりすると楽しいのではないかな?という着想です。

「上板橋デッドエンド」の概要:図版5

実際の制作工程

アイデアが固まったので、同じチャットルームでどんどんゲームの中身を作っていきました。基本的には、「テストプレイをしながら文句を付けて、LLMに作らせる」という、かなり傍若無人な制作スタイルです。プレイしていて面白くないと感じたり、不親切だと感じたら、その都度「ストップ」と言って改善させます。

実際の制作工程:図版1

最終的に、得られたゲーム内容をLLMにまとめさせて、GPTs(ChatGPTを自分の目的に合わせてカスタマイズし、他のユーザーと共有できる機能)にすることにしました。振り返ってみると、このテストプレイ型の開発はなかなか理に適っていたようです。「こうだったら面白いのに」というアイデアをプレイしながらリアルタイムに思いつけるので、あっという間にわたし好みのゾンビ脱出ADVができあがっていきました。

実際の制作工程:図版2

スキルや選択肢を選ぶときは数字だけで答えられるようにするアイデアは、自分で遊んでいて入力が面倒に感じたためです。例えば「①観察眼・②交渉術」と「①懐中電灯・②工具箱」を選ぶなら、「1212」と入力するだけでOKとしました。ビルドのラインナップは作りながら何度も修正しましたが、最終的にこの12個になりました。

実際の制作工程:図版3

ちなみに、この画像は公開されたばかりの最新画像生成モデル「GPT Images-2」で生成したもの。現在ChatGPT上で画像生成を依頼すると、基本的にはGPT Images-2で出力されます。インフォグラフィックの生成に非常に長けたモデルで、NanoBananaProと比べると作業に得意不得意がありますが、このようなプロダクトの手伝いには大変重宝することが分かりました。

「6つの候補から2つを選ぶ」ときの組み合わせは15通りですから、ビルドの組み合わせは15x15=225通りです。ある程度ゲームとして遊べるようになってきたので、チャッピーに頼んでYAML形式(人間もAIも読み取りやすく、書き直しやすいデータ記述形式)で出力してもらいました。「ここまでのゲーム内容をYAML形式でまとめて」と指示しただけです。

実際の制作工程:図版4

<キャラクター設定>

始めはイベントCGのない、テキストオンリーゲームとして製作していましたが、タイトル画像などにキャラクターを登場させたかったので、隣室にいる女子大生(通称403ちゃん)の容姿を決めることにしました。普段のSDXL生成環境でなんとなくイメージをかたちにしたのがこちらの立ち絵。

キャラクター設定:図版1

これを読み込ませて、デビューしたばかりのGPT Images-2でタイトル画像にしてもらうと、一発でこれが出てきました。これには正直、相当驚きました。キャラクターの一貫性もさることながら、プロダクトとしての仕上がりがこれまでにないレベルだと感じたからです。

キャラクター設定:図版2

このときは「画像生成にはducttape3を使え」と指示しないとだめでしたが、現在の手元環境ではGPT Images-2で常に生成できるようになっています。やや平穏な画像でイメージと違ったので、このように指示してブラッシュアップしました。

「ゲームをはじめる」の移動はできなかった

        ▲「ゲームをはじめる」の移動はできなかった

試しに表情集つきのプロフィール画像も依頼してみると、なんとバッチリ成功。ただ、画風が少しマスピ画像寄りに見えるので、多少画風調整を行います。

キャラクター設定:図版3

さきほど作ったSDXL画像をこのように参照させて、タッチをこのように戻しました。こうした表情集や服装バリエーションつきのプロフ画像があると人物のイメージがふくらみ、脚本も作りやすくなったので、早めにキャラの容姿を確定できるのは大変効率的です。これは、ゲームだけでなくオリジナル小説を書かれる方にも有用なのではないかと思います。

キャラクター設定:図版4