こんばんは、スタジオ真榊です。今回は「画像生成AIを使った作品をSNSで広く見てもらうためにはどうしたらいいか」というテーマで、アイデア探しから具体的なワークフロー、フォーマット選びや投稿時の工夫まで、現時点の考えをまとめました。

イラストや漫画を「どう描くべきか」は既にプロの方が数多の書籍で語られていますし、素人である私に語れることはありません。この記事は再現性のある指南書のようなものでは全くありませんし、今後違うやり方に変わっていく可能性も高いです。あくまでワークフロー記録として「賢木はこういう考え方で作っているんだな」と受け止めて頂けるとありがたいです。

例えば以下のような二次創作漫画を思いつくのはどういうタイミングか、アイデアを作品として具体化するとき・できたものをブラッシュアップするとき・完成したものを投稿するときにそれぞれどういうことを考えているか、また反省点はどういうことか…といった観点で、このところ実践している工夫について紹介しています。

今回はあくまで試行錯誤に基づく「私見」の側面が強い記事かと思います。私と同様に未経験からAIで漫画を作ってみたい方や、画像生成AIきっかけで漫画表現を始めた特殊な人間の考え方を知りたい方向けに、淡々と描いていきたいと思いますので、記事の性質をご理解いただいた上でお読みいただけますようお願いいたします。

着想

まずは「こういうのがあったら面白いな」「こういうのを表現してみたいな」という着想をどんなときに思いつくかについて振り返ってみます。

・思いつくのは「インプット時」

ここは個人差があると思いますが、私の場合はインプット時、つまり読書やアニメ鑑賞、TLを眺めていて面白い情報に触れたときなどに連想のように思いつくものがほとんどです。「水星の魔女の二次創作について思いつくのは水星の魔女関連のインプットをしたときだけ」ということは全然なく、関係ない別の漫画やニュース、韓流ドラマ、アクション映画など、日常で感じる「水星の魔女でもこうだったら面白いな」という自由な連想・妄想を、普段からスマホのメモに書きためるようにしています。

・発展するのは「暇なとき」

それ以外のタイミングでは、サウナに入ってデジタルから離れたときや、Chatbotと壁打ちしているときに脳内が整理されて、アイデアが表現に発展することが多いように感じます。どちらかというと、これらは「タネ」の段階の着想が十分あるときに、それを組み合わせて具体化させるときに向いているようです。タネに水を上げたら花が咲いた、という感じでしょうか。

着想のメモは後から読み返して何のことだったか分かる程度に具体的であれば、ごく短くて構いません。サウナから出た後など、まれにアイデアレベルでなく表現のレベルまで浮かんだ場合は、できるだけ詳しく書き留めておきます。冒頭で紹介したスレミオ4コマは「私で童貞捨てたくせに…」というネットミームがたまたまTLに流れてきたときに、「スレミオでこれやったらどうなるだろう?」と連想したのがきっかけ。スマホのメモには「私で童貞捨てた癖に…と呆れるスレ(ッタ)」とだけ書き留めていました。

他に書き留めてあるものでは

・「両耳にパンを当ててみなさい」「こうですか?」「バカのサンドイッチの完成よ」

・「ごめんねスレッタ、ジークアクスはガンダムなの♡」

・スレッタ「草が分かるのってすごく自分がうれしいな」

などなど、自分でもなぜ思いついたか、何が面白いと思ったかわけのわからないものがほとんど...。私の場合、着想はこのように単体では面白くないものばかりで、まだ花が咲いていない「タネ」のようなものです。とりあえず偶発的に得られたタネは忘れる前に保存しておいて、このタネをどうしたら面白いエンタメになるかは、後日サウナやChatボットとの会話でゆっくり考えてみることにしています。

・アイデア(タネ)と表現(花)の違い

この2年で大事だと分かったのは、「インプット」から新たな創作の着想をもらうときに、「表現」をそのまま頂いてきてはダメということです。勝手にもいでもらってきてはいけない「花」が表現、もらってきてもいい「タネ」がアイデアと考えると近いかもしれません。著作権法よりもSNS上の常識に鑑みて、それが「みんなのもの」か「その人だけのもの」かまず考えるということですね。

・アイデア(タネ)と表現(花)の違い:図版1

他人が咲かせた有名な「花」そのものをもらってきたら、ただのパクリか露骨な便乗になってしまって、たとえ権利侵害ではなかったとしても、鑑賞者から見て単純に面白くならないことが多いです。一方、すごく面白い作品から「タネ」をもらってきたとしても、ちゃんと「自分の創作性」という水を上げていないと、ただの焼き直しで面白くならないこともよくあります。

例えば最近Xで流行った「いいね・リツイート数達成でキャラクターの服が切れていく」というミーム。あれはそもそももっと安直だった「いいね・リツイート数達成でH差分」のアイデアを元に、誰かが新たに創作性を加えて表現にしたものでしょう。そして、「キャラの服が切れるXチャレンジ」というアイデア部分がまた新たなタネとなり、多くの創作者に引き継がれたのではないかと思います。

しかし「いいね・リツイート数達成で服が切れるやつ」をやれば誰でもウケるわけではないわけで、もし私がミナちゃんでやったらいいね10もいかないでしょう。やはり面白くするにはもう一ひねり、自分の創作性を加える必要があります。例えば「服以外にどんなものが切れると面白いだろうか?」と逆算で考え、こういった表現に発展させるのがコツなようです。

AIを使った作品には、手描きよりも強く「フリーライド感」が出てしまいます。キャラクターをお借りする二次創作ならなおさらです。AI作品を楽しんでもらうためにはその「フリーライド感」をまずなんとかする必要があり、そのためには何か自分由来のユニークな個性やオリジナリティを分かりやすく加えることが肝要です。これは着想段階だけでなく、仕上げ段階や投稿段階にも関わってくる大事なポイントですので、あとでまた触れたいと思います。

・アイデア(タネ)と表現(花)の違い:図版2

  こういうのは「like_and_retweet」や「twitter_strip_game」で出てきます

メモを元にLLM壁打ち

普段スマホにメモしておいたアイデアはそのまま放置してすっかり忘れているのですが、空いた時間に「何か作ろうかな」と思い立ったら、そのメモを読み返して具体的な表現を考えます。ほどよく忘れていると、客観的に自分のアイデアを眺めることができるので、後日見返すことで「面白くできそうなもの」と「絶望的なもの」を見分けることができるようになっています。

今回は「"私で童貞捨てたくせに…"とスレッタが言う」というアイデアをどうにか表現にしたいわけですが、これだけではさすがにまだ面白くありません。というか、私はもうこれだけでどちゃくそ面白いのですが(スイマセン)、その面白さを他人に伝えるためにはそれなりの工夫がいるわけですね。

この着想は「オチ」の部分ですので、まずここに至る「フリ」を逆算で考える必要があります。このオチが生きる「フリ」としては、やはりミオリネが何かしら偉そうに発言することが不可欠なわけですから、誰に・どんな状況で・どんな発言をしたら、二次創作として面白くなるかを考えればよいことになります。

「奪妻契約」の制作記でも同じやり方を紹介しましたが、こういうときは「LLMにたくさんボツアイデアを出してもらう」のが一番。さっそくChatGPT4oを使って壁打ちをしてみました。

LLMへの最初の問い掛けはこのような感じ。なんだか大喜利みたいですね。

メモを元にLLM壁打ち:図版1

GPTくんは頑張っていろいろ案を出してくれますが、例によってそのまま採用できるものは基本的にありません。ただ、これを見ていればなんとなく「ダメ」な理由が分かってくるので、「ダメ」を避ける状況を考えればおのずと望みのあるラインが見えてきます。

GPTくんのダメ提案から「2人の会話だと生々しくてスムーズにオチないし、キャラ崩壊も起こしやすい」ことがよく分かったので、スレッタに口に出して発言させるのではなく「心の中でつっこむオチ」にすることにし、ミオリネは別の人と会話している形式にすることを思いつきました。

メモを元にLLM壁打ち:図版2

おおまかなアイデアが固まってきたら、今度はLLMに「壁打ち相手」ではなく「案出しロボ」になってもらいます。「こういうせりふだけを沢山出して」と命じて、それっぽい発言を出してもらいましょう。これも例によってそのままは使えませんが、「この方向だな」ということは固められます。

メモを元にLLM壁打ち:図版3

この時点で「ミオリネが社長として部下の恋愛相談に乗っている」「それをスレッタが横でなんとなく聞いている」「ミオリネがいかにも自分が恋愛の達人かのような恋愛語りをする」「最終コマでスレッタが例のせりふを思い浮かべる」という流れが決まり、ボリュームからしても4コマ程度がふさわしいだろう、ということがだいたい固まりました。最終的に何一つGPTくんの提案は採用されていないのですが、一人では思いつけないアイデアが練られたと思います。

ちなみに、こちらの投稿を最後まで読むとびっくりする方は多いのではないかと思います。パーソナル化などはまだ及んでいない部分も多いですが、ChatGPT4oを大きく上回る性能が感じられ、今後はこちらをメインで使っていこうかと考えています。

SNSは4コマ向き?

ネタの輪郭が見えてきたら、次に「フォーマット」を考えます。つまり、そのネタを表現するにはちゃんとコマを割った1ページの漫画形式にすべきか、それとも4コマがいいか、1コマ漫画がいいか、それともフキダシなしの1枚絵がいいか…という、具体的な検討段階に入るわけですね。フォーマット別にメリット・デメリットがあるので、順番に見ていきます。

①1p漫画

通常の漫画形式でコマを割るスタイル。コマ割りはそれなりに大変で、本をいろいろと読んだり画像編集ソフトの操作に慣れないとできるようにならないので、初心者にとってはハードルが高い選択肢ではあります。スマホで見られることがほとんどなSNSの場合、1コマあたりはできるだけ大きくしたいので、1pあたり4コマあたりが基本かなと思います。

下図の1p漫画は5コマに割っていますが、実はこれは「4コマ(2段)」の亜種です。

①1p漫画:図版1

「4コマ(2段)」とはこれ。Clipstudioにはこうしたコマ割りテンプレートが多数あるので、一番イメージに近いものを選んでシナリオを割り付けていき、うまくハマらなければコマを分割したり、追加したりして調整するわけですね。

①1p漫画:図版2

1p漫画のメリットは、TLで流れてきたときにページの全体図がぱっと目に入るので、興味さえ持ってもらえたらタップしてもらいやすいことです。Xではユーザーが画像を拡大表示したり、いいねを押したりして反応する「エンゲージメント」の比率が高い投稿ほど「おすすめ」欄に乗りやすくなります。人間心理上も、拡大してちゃんと見たものは「いいね」やRPしたくなるものですから、フキダシの文字を読むためにタップを誘発しやすい1p漫画形式は比較的SNSで有利なフォーマットといえます。

一方デメリットは、スマホだとフキダシ内が小さくて読めない点。人間には「よっぽど面白そうに見えないとタップしたくない欲」があるため、フキダシの中が読めない時点で、そのままスルーされてしまう危険があります(まだいいねがたくさんついていない投稿ならなおさらです)。これを避けるためには、せりふが小さくて読めない段階でも「おっ、私の好きそうな漫画だな」と興味を持ってもらう仕組み作りが必要。つまり、ポストの地の文で「何についてのどんな漫画か」がある程度察せられるようにしたり、1コマ目である右上をデカめにして、すぐ「ああ、こういうやつね」とわかるようにしてあげたりすると読まれやすいようです。

上の漫画の例では、映画館でジークアクスを見た人がみんな「こ、こんなことが許されていいのか」とタフ化するミームがXで流行っていたので、1コマ目でそれをパロディすることで「ジークアクスを水星の魔女の2人が見に行く1p漫画」ということがすぐ分かる形にしました。2コマ目以降のセリフが読めなくても、1コマ目の顔面の強さでタップしてくれた方が多かったのではないかなと思います。

・1p漫画最強は「ちいかわ」

ちなみに世界最強のSNS漫画「ちいかわ」はこの「1p漫画」フォーマットですが、毎回10コマ前後に細かく割っているのに、タップしなくてもほぼそのまま楽しめる異常に高い可読性を備えています。自然にTLで目に入り、自然にそのまま読み進められてしまう完璧な情報量操作がなされているのですね。

フキダシの大きさ、手描き文字の読みやすさ、キャラクターの面積当たりの情報の少なさ(それなのに強烈に個性がありカワイイ)、そして更新速度の速さ、定期的に不穏さを漂わせることによるヒキと、今後が気になる=ヒットする要素が粒ぞろいで、非常によく計算されているように見えます。