こんばんは、スタジオ真榊です。こちらの記事は、Googleの画像編集AI「NanoBananaPro」(以下プロバナナ)を使った漫画作りに関する連載特集の第1回です。
今年8月末に登場した通常版のNanoBanana(無印バナナ)では、「1pまるまるの生成もできるけど、ちょっと不自然かな」という感じでしたが、プロバナナではGemini 3 Proに根差した「文脈を読む力」と日本語レンダリング能力の向上によって、かなり意図に近い漫画を生成できるようになっています。一方で、よく注意すべき点や不得意なこともあり、プロバナナがいまいち感想を持ちづらい「虚無漫画」を量産しがちな理由も段々と見えてきました。
連載第1回では、こうしたプロバナナの得手不得手を踏まえて、効果的に漫画を作るための「7つの活用法」を整理しました。一つ一つ、順を追って詳しく見ていきたいと思います。【約2万5000字】
無印バナナでの漫画制作記事はこちら。今回の記事と見比べていただくと、プロバナナの進歩具合がより分かりやすく伝わると思います。
はじめに プロバナナ漫画のリアルな実力
プロバナナが1p漫画が生成できるようになっているのは既に前回の特集で検証済みですので、今回はより実践的に「どのように指示するとスムーズに漫画作りができるか」を考えるところから始めたいと思います。
AI漫画と言えば、以前は1コマずつキャラクターを白背景で生成して、自分でコマ割りしたキャンバス上に配置し、文字入れをしていく作り方が一般的でした。つまり漫画の設計図に当たるネームは自分で作る必要があるため、どうしても経験者でないとコマ割りや文字の配置、表情変化などの文脈作りに不自然さが出てしまうのがネックだったわけです。
プロバナナはこの点、コマ割りや人物の配置、表情も含めてかなり「正解」に近いものを出せるようになってきています。前回の特集で生成したのはこちらの漫画。

これはほぼプロバナナの出力物そのまま。最初の吹き出し部分でミスしていた「やべてやべーらしい」の部分を3文字消しただけで、ほぼ自然に読むことができる漫画に仕上がっています。(生成プラットフォームはFreepikを使用)

プロンプト指示などに特に変わった部分はなく、「キャラクターの容姿が分かる画像を1枚与えて、コマ割りもしくはセリフの流れを自然な日本語文で指示する」というスタンダードなやり方で生成しています。
例えばこのような感じ。
指示:この女の子のコミカルな1ページのカラー漫画を作って下さい。セリフも日本語の吹き出しで自然に入れてください。コマの読み順は日本式に、右上から左下に向かってください。「ナノバナナなんたら言うのがやばいらしい!私もAI美人にしてもらお!」 「えっこれ私!?」(赤眼鏡をかけたブサイクがPC画面に映る)「これだからメリケンのプロダクトは-!」「えーとボンキュッボンのムチムチで…」カチャカチャ…「もうやだー!」(オチ。画面にムキムキのボディビルダーの体に顔だけこの女の子のキャラクターが出る。パチンコ画面の金色激アツ文字で「フルアーマームチムチミナちゃん」と書かれている)

特に難しいことをしているわけではなく、ごく自然に日本語でやってほしいことを伝えているだけですね。いちいち「全体を三段に分けて、一段目を左右に割ります。一番下のコマはオチなので大きくして…」とか、「キーボードのまわりに『カチャカチャ』と擬音を入れて」などと細かく指示しなくても、プロバナナは学習してきた「正解」の漫画の特徴量に従って、自然なコマ割りを考案してくれています。また、集中線や漫符、ミニキャラやtrembling(震え線)、^^^(驚いたことを示すライン)なども自分で適切な演出を考えて加えてくれていますね。
ただ、そうした演出を「ありがたい」と感じるか、「おせっかい」と感じるかはユーザー次第です。また、1コマ目にスニーカーが映り込むなど、AIらしいミスはまだまだ起こりがち。「無印から大きく進化はしているけれど、まだまだ人間がやらなくてはならない仕事はある」ということを確認しつつ、今回はもう少し踏み込んで、実践的な漫画活用法をあれこれ検証してみたいと思います。

プロバナナへの「頼み方」
プロバナナの進化によって、AI漫画の作り方は「生成画像をコマの中に並べる」とか「キャラクターの容姿が分かる画像を1枚与えて、コマ割りもしくはセリフの流れを文章で指示する」といったもののほかにも、さまざまなやり方が可能になったはずです。例えば、絵のないコマ割りだけの画像を与えて展開を固定したり、完成した漫画の一部を差し替えてもらったり、まだ存在しない「続き」を自分で考えてもらったりと、多様な使い方が思いつきます。
▲指定したコマ割りをしっかり守ってコマごとの画像を生成した例
・プロバナナの「思考プロセス」
プロバナナにユーザーが指示すると、内部的にはいったんGemini 3 Proが依頼の仲立ちをして、ユーザーが何を望んでいるか、どうしたら実現できるかをあれこれ思考し、画像生成モデルが読み取りやすい英語プロンプトに改変してくれているようです。その思考過程は、Gemini 3 Proに画像生成を指示して「思考プロセスを表示」することで垣間見ることができます。

上記のスクリーンショットは、こちらのAI漫画を製作する際の思考プロセスです。夕暮れをバックにタバコを吸う武装メイドの画像を渡して、「この画像が最終コマになる漫画を生成してください」と指示しただけなのですが、非常に広範な検討を行ってから画像生成に取りかかっていることが分かります。
プロバナナの「文脈を読む力」はこうしたGemini 3 Proの作業に裏打ちされているので、無印時代にはできなかったさまざまな無茶ぶりが通じるようになっています。
・「あいまい指示」で漫画を作れる?
例えばこのような、「なんか面白いことやって」式のかなりあいまいな指示をしてみます。

こちらが一発で出てきたもの。

…。
言いたいことは山ほどあると思いますが、まずそれらをごくりと飲み込んでいただいて、「これができるようになった」と「まだこれはできない」の両方をこの漫画から読み取ってみましょう。
・プロバナナは「これができるようになった」
まず、NanoBananaProは指示されたコマ割りをそれなりにきちんと守ることができ、1コマ目で読者に状況を伝える力があり、起承転結とオチの概念を理解することができます。キャラクターの表情を描き分けることができますし、土煙で走っていることを表現するなどの「漫符」や集中線などもそこそこ使いこなすことができます。キャラクターの一貫性を1ページの中で保つことができ、主要キャラクターの画風に合わせつつ、情報量の少ない「モブ」を描画することもできています。

▲モブの情報量が適度に落とされていて、視聴を邪魔しない
これらは、どれも無印バナナやSDXLを使った従来のAI漫画作りでは難しかったことです。以前スタジオ真榊でR-18作品を作ったときは、脇役キャラまでわざわざLoRAを作って一貫性を保ったわけですが、やはり全部のコマが均一の描き込み量になってしまうきらいがありましたし、ネームや写植、集中線などの作業は自分で行わなければなりませんでした。
もちろんプロバナナでも、漫画の根幹部分はニンゲンが作らないとなかなか面白くならないわけですが、こうした強みを生かすことで、作画の苦労は大幅に削減できるはずです。
では、「弱点」のほうはどうでしょうか。
・プロバナナは「これがまだできない」
もう一度さきほどの遅刻4コマを観察してみると、プロバナナの苦手部分もあれこれ見えてきます。まず、我々日本人がぱっと読むと時系列がおかしく感じますね。これはプロバナナが「漫画のコマは左から右へ読むもの」と思い込んでいることが原因です。

日本語話者が普通に読むと4コマ目のリアクション「えっ?」が「今日、日曜日だよ…」というオチより先に目に入ってしまいますが、英語圏で学習されたプロバナナにとっては、これが正しい順に見えているということです(つまり3コマ目も、"学校まであと1分"が「間に合った!」よりも先に読まれると誤解しています。1コマ目の時計の位置も同じ)。4コマの場合も「コマは上から下へ、コマ内では右上から左下へ読むもの」という定義を与えるか、コマごとに細かな配置を指示してあげる必要があり、こうしたNanoBanana特有の「文化の違い」が、日本のユーザーにとってあれこれ創作の障壁になることをまず認識しておきましょう。
次に、ネタの内容です。プロバナナは文脈のある表現がかなりできるようになっていますが、どうしても「遅刻」と言えば「日曜日なのに学校に行ってしまった」という古典的なネタを「正解」として選んでしまいますし、それなら教室に誰もいないはずなのに、なぜかクラスメイトが突っ込むという妙な展開にも気づけません。

プロバナナは優秀な漫画生成AIですが、その実力は「典型的な正解」を考えるレベルにとどまっており、一般読者をひとりで納得させられるストーリーテリング力はまだないと思ったほうがいいでしょう。何度も試行を繰り返せばたまたまそれなりに見られるものができることもありますが、ストーリーや展開、セリフ回しはニンゲンが手綱を握って作らないと、なんともいえない微妙な作品を大量生産してしまうことになります。
これはどちらかというと、生成の仲立ちをしてくれているGemini 3 Proの性質かなと思います。Geminiと創作の壁打ちをしてみると分かるのですが、モデルとしての精度や実力が足りなくてありきたりなアイデアを出してくるというより、「ユーザーは理路整然として整った"正解漫画"を望んでいる」と判断しがちなところがあるようです。つまり、教科書通りの古典的なネタや展開が「正解」だと思い込んでいて、突飛な展開や描画は「良くない」ものとして選びたがらないんですね。
下図はぶるぺん(@blue_pen5805)さんのプロンプト例ですが、このようにちゃんと超展開を出すよう指示すれば、プロバナナもこのような漫画を出すことができます。要するに、プロバナナはユーザーに指示されない限り、極力「マスピ漫画」(展開や絵柄、タッチ、描画などが平均的な正解漫画)を出そうとしてくる性質がある、ということを理解しておかなければいけません。
さらにもう一つの弱点は、Gemini 3 Proとの「伝言ゲーム」による作画ミスがしばしば起きうることです。前回の特集でも少し触れましたが、プロンプト指示があいまいだったり、英訳しにくいニュアンスの日本語だったりすると、その部分で誤解が生じがち。例えば下図のように、Geminiは「やべー」という日本語表現を上手に画像生成モデルに伝えられず、何度生成してもその部分で誤植が生じる現象が確認できました。

▲何度やってもここで誤字るが…

▲セリフを「やばいらしい」に変えると無事通る
さきほどの遅刻漫画でも、タイトルが「遅刻RTA(Any%)」となっており、ネタを考案したLLMとの橋渡しがどこかでうまくいかなかったことがうかがえますね。
また、キャラクターの一貫性保持力もかなりのものではありますが、服装や髪型といった外見的特徴はしっかり保持できても、顔立ちやタッチの印象は変わってしまうことが多いです。さきほどの漫画はこちらの画像を参照させて生成したものですが、見比べるとやはりタッチが異なります。

▲「ムキムキミナちゃん」漫画で参照させたキャラデザ画像
「画風は@img1を厳密に再現してください。現代的な日本の2Dアニメイラスト調で、グラデーションを使わないフラットなセルシェーディングでお願いします」などと念押し指示すると、一貫性の保持力はある程度向上するときもありますが、そこまで安定しないようです。よって、普段自分が生成している画風と統一したければ、プロバナナの生成物をさらにimage2imageするなどの「ひと手間」が必要ということになります。

得意不得意を踏まえた「7つの活用法」
ここまで見てきたプロバナナの得意・不得意を踏まえて、漫画制作にどのように使うと効果的かをざっと考えてみると、以下のような活用法があるかと思います。
①おおまかお題指示
キャラクター画像やおおまかなお題だけを与えて1ページ漫画を作ってもらう手法。例えば、「このキャラが〇〇している4コマ漫画を作って」と指示して、細かいことは全部AIに丸投げする。

プロバナナお任せだと、基本的に「なんとなく整っているが、当たり前すぎてなんだかおもしろくない」ものになりがちだが、導入や場面設定はところどころ面白いことが結構ある。4コマの次のアイデアに詰まっているときに、こうしていくつか案出ししてもらうことで、インスピレーションをもらえるかもしれない。
②セリフや構図を詳しく文章指示
キャラ容姿を画像で、コマ割り・セリフ・ポーズ・擬音などを文章でそれぞれ伝えることで、完成した1ページを意図通りに生成する手法。吹き出しだけでなく、擬音や漫符なども指示可能。指示が細かくなるほど作画ミスしやすくなり、アバウトになるほど「一見整っているが退屈」になる傾向がうかがえる。コマの読み順も指定しないと、英語圏の読み順になってしまいがち。

③コマ割り・セリフを画像で指示
キャラ容姿だけでなく、コマ割りやセリフまで画像で指示してしまうスタイル。絵が入っていない「カラのコマ割り」を作って、プロンプト指示通り絵で埋めてもらう。読者の目に入る情報の順序や視線誘導まで考えてネームが切れる人向け。

応用として、漫画としての流れは問題ないのに絵が「惜しい」漫画が生成できたときに、いったん絵の部分だけをプロバナナに消してもらって「カラのコマ割り」を入手し、それを入力して「絵だけガチャを引き直す」ような手法も可能。
④ネーム指示
キャラクター位置や表情、吹き出し位置などを描き込んだネームをそのままNanoBananaProに与えて、キャラクター画像と合わせて完成漫画にしてもらう手法。「AIお任せ」部分がぐっと減るので、より意図通りになるが、操作者が漫画素人の場合はむしろ品質が上がってしまう。AIを使わないで、きちんと漫画作画ができる層向け。

⑤空白部分や「続き」の生成
あるページやコマを読み込ませて「この続きを生成して」とAIに指示する手法。コマの一部だけを空白にして、ふさわしい内容を埋めてもらったり、背景だけ、小物だけ、群衆だけを描いてもらったりすることもできる。

⑥漫画の一部修正(漫画インペイント)
「バッグをここに移動させて」「これを消して」「ここにこれを描いて」といった自然言語指示で漫画を修正してもらうインペイント的な手法。ミスが全くない漫画が生成されるまでガチャを繰り返すより、こちらのほうが効率的。うまくいかなかったところを白く塗りつぶして「空白部分にこれを描いて」と指示したり、下図のように赤ペンを使って任意の指示をしたりできる。
⑦最終調整(描写のパワーアップ・エフェクト等)
こちらは漫画の修正ではなく、描画の「パワーアップ」をはかる手法。「この漫画、間違いはないんだけれど、何かパンチが足りないなあ」と思ったとき、その画像を入力して「ここの表情をもっと大げさにして」「パンチの迫力を10倍にして」などと指示することで、描かれている内容の大筋はそのままに、描写をパワーアップさせることができます。
描かれている内容はそっくりそのままで、水彩画風にしたり、モノクロをカラーにしたりといったスタイル変更ももちろん可能。アイデア次第で、さらにさまざまな活用法が広がりそうに思えます。

以上、7つの活用法でした。
今後あれこれ実践を重ねる中でまだまだ思いつくかもしれませんが、とりあえずはこんなところでしょうか。今回の特集ではこれらの手法を順番に試して、有用な使い方やコツ、失敗しやすいポイントなどを明らかにしたいと思います。








