こんにちは、スタジオ真榊です。2025年3月1日に、NovelAI Diffusion V4のフルバージョンが公開されました。機能が限定された先行公開版「V4 Curated Preview」が昨年12月21日に公開されており、いよいよNSFW機能などが解放された「full」を使うことができるようになったわけです。

「Curated Preview」リリースのときも所感をこちらの記事でお伝えしましたが、今回も最速レビューということで、フルバージョンの進化ポイントやユーザーとしての感想、実用面での使いどころなどを駆け足で紹介していきたいと思います。

(※記事中には私がv4を試していて感じた個人的感想が随所に出てきますが、あくまでごく短期間に感じた体感的なものですので、他の方の印象と違ったり、使っていくうちに異なる印象になったりすることはありえます。その点はご留意の上でお読みいただけると助かります)

【2025・03・16追記】最速レビュー時は「フォーカスインペイント」の実力を分かっていませんでしたので、該当項目を詳しく描き替えました。

fullバージョンの進化ポイント

NovelAI公式サイト よりスクリーンショット引用

▲NovelAI公式サイトよりスクリーンショット引用

NovelAI V4は、これまでのようなStable Diffusionベースのファインチューニングモデルではなく、米Anlatan社が完全にイチから学習を行ったNovelAI初のオリジナルモデルです。fullバージョンではNSFW生成など多くの機能が解放されただけでなく、curatedバージョンよりもさらに1か月分多く、最新のデータセットを学習したとされています。

V3からの進化ポイントを簡単にまとめると、こんな感じ。

・タグで再現できる要素(キャラ・画風・シチュエーション等)が増加

・キャラごとのプロンプト・位置・アクションを指定できる「マルチキャラクタープロンプト」

・danbooruタグに加え、自然言語(英語)での細かな指示が可能に

・プロンプト拘束力が上昇(指示していないものが出にくい)

・VAEがSDXL用からFlux用に変更。細部がより明確に表現されるように

・V3でも強力だったインペイント力の増強と、「フォーカスインペイント」の実装

(※V3の「バイブストランスファー」機能は近日実装予定とのこと)

文章で説明するよりも、具体的な生成例を見た方が早いですね。画風、クォリティタグ、背景力、自然言語プロンプトなど、いろいろな要素を順番に試しました。

・マスピ顔は今回も「なし」

まず、V4でミナちゃんの生成をするとこんな感じです。v3と同じように、確たる「マスピ顔」は設定されていないことがうかがえます。

・マスピ顔は今回も「なし」:図版1

画風をタグで縛らない限り、このように「指示された要素は満たしているが、毎回顔立ちやタッチの違う子」が生成されます。顔立ちやキャラデザインだけでなく、スカートの描き方なども異なっているのが分かるかと思います。

・画風関連のタグ適用結果

「アニメ調」「水彩調」など、いくつか画風関連のタグを適用した結果を見てみます。

①flat color

・画風関連のタグ適用結果:図版1

②anime coloring

・画風関連のタグ適用結果:図版2

③sketch

・画風関連のタグ適用結果:図版3

④comic+monochrome

・画風関連のタグ適用結果:図版4

⑤watercolor(medium)

・画風関連のタグ適用結果:図版5

・プロンプト忠実度の向上

プロンプトへの忠実度はかなり上がっているようで、背景を特に指定していない場合、自動的に白背景になることが多かったです。indoorsとかblue skyなどと指定しない場合、勝手にそうした背景が描かれにくくなっていますし、school uniformタグにschoolやclassroom要素が学習されてしまっていて、勝手に学校っぽい背景が浮かんでくるといったことも少なくなっているようです。ただ、バニーガールを生成すると酒場背景が出やすいといった現象は確認できましたので、あくまで体感に過ぎないかもしれません。

上の生成例ではプロンプトガイダンス(SDにおけるスケールに該当)が5になっているので、これより下げると多様性が上がり、指示しないものが出てくる可能性が高まります。

・ベンチマーク「肌の色が違う手」

生成力はV3からどれくらい進化したでしょうか。ベンチマークとして、「黒い肌の女性と、白い肌の女性がベッドシーツの上で手を絡めている」というかなり難しそうな生成を、V3とV4それぞれで試してみます。プロンプトは「hand focus, 2girls,interlocked fingers, yuri,love,out of frame,[[dark skinned female]],skin color difference,on bed,bed sheet」です。

まずこちらがV3。

・ベンチマーク「肌の色が違う手」:図版1

こちらがV4です。

・ベンチマーク「肌の色が違う手」:図版2

V4も完璧というわけではありませんが、打率はこちらの方が高いように感じました。また、V4のほうがプロンプト指示に余計な解釈を加えず、シンプルな生成結果になっていることも感じられます。V3は特に指示していないのにエモいライティングを出していますが(light laysやfaint lightなどを適用した感じ)、V4は指示されない限り、言われた通りのものを出そうとしている体感があります。

・クリエイター名/作品名タグについて

また、curatedバージョンのレビューでも書いた通り、有名クリエイター(漫画家、イラストレーター等)の名前や、作品名のタグを使うと、これまで以上に高い精度で画風が再現できることを確認しました。V3まではあまり似ていると感じられなかったクリエイターの場合も、かなりそっくりに生成できるようです。

クリエイター名タグを使うことによって、画風の一貫性は容易に保つことができますが、単体のクリエイター名タグを使うのは非常にトラブルフルであることをよく考えて、自衛するようにしてください。

今回初めてNovelAIに触れる方もいると思いますので、以下いつもの注意書きです。

・「画風は著作権保護されない」の罠

ご存じの通り、生成段階の著作権侵害は「依拠性」と「類似性」によって判断されます。(と言われてぱっと分からない方は文化庁資料をご覧ください)

クリエイター名のタグを使っている時点で依拠性を満たす可能性は高く、あとは生成者がある既存作品の存在を知っていて、その作品と客観的に類似性があるとみなされれば、手描きの場合と変わらず著作権侵害になりうるということです。

最終的に著作権侵害かどうかを判断するのはもちろん裁判所。しかし、その手前で削除と損害賠償を求めて民事訴訟を起こされたり、告訴を経て警察に家宅捜索され、書類送検や逮捕に至ったりする恐れが常にあります。

・「画風は著作権保護されない」の罠:図版1

自分の中では「画風は表現ではなくアイデアだから、著作権保護されない。自分の投稿した画像はその作家のどの作品にも似ていないから、類似性がない」と思っていても、画風を真似られた作家さんがもし激烈に画像生成AIを嫌悪している人だった場合、問題提起のために敗訴覚悟の提訴や告訴に踏み切られるかもしれない、ということです。実際には類似性が薄かったとしても、何年もかかる非常に面倒な訴訟に巻き込まれますし、一審で無事「類似性がない」などの判断を勝ち取れたとしても、控訴されればラウンド2が始まります。

「訴訟費用と時間とお金と心の平穏を失ってまで、他人の画風の画像を公開したいですか?」と言われたら「いいえ」と答える人がほとんどだと思います。クリエイター名タグを使うことがまずいというより、たかが遊びの生成で誰かのビジネスを邪魔して激烈に怒らせることの方が、あとあと面倒な事態を招くということですね。

クリエイター名タグを避けて画風固定をする場合は、年代ごとのマスピ顔が整理された「year〇〇」タグを使ったり、「たれ目」「ドットの鼻」などと細かく指定することで、これくらい狭めることはできます。

使用タグ:[[[flat color,anime coloring,hatching,sketch]]],year2024,ai-generated,tareme,dot nose,

▲使用タグ:[[[flat color,anime coloring,hatching,sketch]]],year2024,ai-generated,tareme,dot nose,

何がマナーであるかはおのおのが自分のために考えるべきことですので、この記事でマナー講師のように「ユーザーのあるべき姿」を説いたりするつもりはありません。「画像生成を安心して楽しむためには、他人に見られても問題がないようなプロンプトを追求しておいた方が安牌」程度のお話かなと思います。

新クォリティタグ「no text」

さて、デフォルトで用意されている品質タグ(クォリティタグ)は「加える」か「OFF」かの二択。オンにすると、V4の場合は「best quality, very aesthetic, absurdres,no text」の4つが内部で書き加えられます。

この「no text」は、画面上にフキダシやロゴ、サイン、擬音などが生じてしまうのを防ぐために、V4で新たに導入されたクォリティタグとのこと。品質タグを「加える」にしていると、no textタグの影響で文字を生成しないバイアスが強くかかります。下の例では「?」の吹き出しを出すようプロンプトで指示していますが、「no text」タグが裏で作用しているため、吹き出し指示が高確率で無視されています。

新クォリティタグ「no text」:図版1

文字を出したい場合は、品質タグを「オフ」にした上で、「no text」を除いた「best quality, very aesthetic, absurdres」を自分で加えることで、V3以前と同じように生成することができます。

新クォリティタグ「no text」:図版2

英文のテキストを入力したい場合は、「text:〇〇」のタグでできます。例えば、「text:novelAI v4!,speech bubble」とするとこの通り。日本語は未対応のようです。

新クォリティタグ「no text」:図版3

背景力はどうなった?

curatedバージョンでは明らかに背景がはっきり描かれにくいバイアスがかかっていましたので、fullバージョンでどれくらい描かれるようになったか試してみます。

こちらは、上のプロンプトに加えて「渋谷の街・群衆・車・空」と指示して生成したもの。

背景力はどうなった?:図版1

「普通サイズ・横型」サイズで生成したためか、さほど一般的なSDXLモデルと大差ない生成結果となりました。

「大サイズ・横型」にするとこのような感じです。「scenery」が悪さをしている感じがしたので取り去ると、ややましになりました。背景についてはバカ強というわけではなく、画風タグなどで底上げする必要があるように思います。

背景力はどうなった?:図版2

また、V4の背景の特徴として、クォリティタグをいじらなかった場合はかなりボケがちであると感じています。特に、キャンバスサイズが「普通」の場合はボケやすい感じがします。

これを回避したい場合は、blurry backgroundやdepth of fieldをネガティブに入れたり、フラット系の画風指示タグを使うなどしましょう。基本的に、novelAIで一貫性のある生成をする場合は自分なりにクォリティタグを作り込む必要がありますので、それなりに試行錯誤が必要かと思います。

アップスケールの取り回し

こちらは「1girl,solo,red glasses,serafuku,long ponytail,short sleeves,

navy pleated skirt, shiny skin,white shirt,black pantyhose,blue eyes,black hair,

white ribbon,dot nose,red tie,smallbreasts,outdoor,city,sky,car,crowd,

tokyo,shibuya,photo_background」というプロンプトを使い、普通サイズ・横型で生成したものです。おおむね整合性は取れていますが、細部はぼやけていますので、画面右側の「品質向上」ボタンからアップスケールを行ってみます。

アップスケールの取り回し:図版1

特に取り回しはV3と変わっておらず、普通サイズからは等倍と1.5倍のみが選択可能。デフォルトでは、このようにノイズ除去強度を「レベル」で選択できます。

アップスケールの取り回し:図版2

1.5倍、レベル3でアップスケールしたものがこちら。細部がはっきりアップスケールされました。(背景はかなり描き替えられ、メインキャラも視線や制服の細部がやや変化しています)

アップスケールの取り回し:図版3

「高度な設定を表示」ボタンを押すと、このようにノイズ除去強度と加えるノイズ値を操作することができます。レベルが上がるほど、それぞれの値が段階的に大きくなる仕組みですが、ノイズ値が大きすぎると全く違う画像になってしまう点に注意が必要です。

デフォルトのレベル3だと「ノイズ除去強度0.5、ノイズ値0」の設定。下図は最強のレベル5ですが、それでもこの程度にとどまっています。

アップスケールの取り回し:図版4

こちらが「レベル5」でアップスケールしたものです。こうした複雑な背景にしたい場合は、普段の記事で解説しているような、背景とメインキャラを別々に生成するなどの工夫が必要になるかと思います。

アップスケールの取り回し:図版5

新機能①「マルチキャラクタープロンプト」

V4の目玉の一つが、キャラクターの描き分けがかなり高性能にできる「マルチキャラクタープロンプト」の搭載です。curatedのレビューでも説明しましたが、このようにキャラクターごとに容姿や仕草のプロンプトを分けて適用することができます。(※1つの画像につき、最大6人まで)

新機能①「マルチキャラクタープロンプト」:図版1

シーンの概要を説明する「ベースプロンプト」を普段のプロンプト欄に記入したら、複数キャラそれぞれの容姿や仕草、カメラワークなどを説明する「キャラクタープロンプト」を専用の欄に記述すればOK。これによって、キャラクターAの特徴がキャラクターBに波及してしまう(目の色、表情など)のを簡単に抑制することができますし、キャラごとにネガティブタグを指定することもできます。

新機能①「マルチキャラクタープロンプト」:図版2

上の例は、以下のようなプロンプトで生成できました。

ベースプロンプト:2girls,eye contact,standing,indoors,upper body,side by side,height difference

キャラクター1(ミナちゃん):girl, adjusting eyewear, embarrassed,sidelocks,red-framed eyewear,semi-rimless eyewear,blue eyes,white pupils,school uniform,serafuku,hair between eyes,navy_sailor_collar,ponytail,short sleeves,shiny skin,black hair,white bow,red neckerchief, navy pleated skirt,pantyhose, looking at another

キャラクター2(綾香さん):girl,wife, tall female,curvy,(((thick eyebrows))),tareme,blue eyes,hand in own hair,large breasts,shiny black hair,straight medium hair,one ear,blunt bangs,crown braid,x hair ornament, blue hairpin,asymmetrical hair,shiny skin,blunt bangs, detailed grey sweater,black skirt,40 years old,sleeves past wrists, smile, looking at another

ポイントは、キャラの方は「1girl」「1boy」ではなく「girl」や「boy」を使うことですね。

「curated」では背景指示があまり効きませんでしたが、fullバージョンになってきちんと背景処理ができるようになったと感じました。下図は、さきほどのプロンプトに「back-to-back,sitting on bed,bedroom,pillow,from above」を加えて生成したものですが、指定した通りに「寝室でベッドの上に違う方向を向いて座っている」画像にできています。(※side by sideとback to backを併用しているので、このように微妙に違う向きをして並ぶ形になっている)

新機能①「マルチキャラクタープロンプト」:図版3

・キャラクタープロンプトもインポート可

ちなみに、通常のプロンプトと同様、これらの個別のキャラクタープロンプトはベースプロンプトと別にpngに保存されています。画面右側の生成画像を画面左側のメニュー上にドラッグアンドドロップすれば、下図のような画面が開きます。あとはインポートしたい情報にチェックを入れることで、少し前に生成した画像の情報を使って再生成を行うことが可能です。

・キャラクタープロンプトもインポート可:図版1

Xに投稿した画像はこうしたメタデータが削除されてしまいますが、アップするプラットフォームによっては他人もインポートできる状態になります。プロンプトをシェアしたくない場合は注意しましょう。

【★ちょっと脱線:見落としがちな小ネタ】

・画面右側の生成履歴上でCtrlキーを押しながら画像をクリックすると、その画像を生成したときの全ての入力情報が画面左側の生成メニューに反映されます。プロンプトを一部書き換えたいとか、別seedで生成したい場合に便利です。

・画面左上のアヒルのようなボタンを押すと、「自動ダウンロード」というトグルがあります。これをオンにしていると、生成後に画像が自動ダウンロードされますので、不意に画面を更新したり消したりしてしまって生成画像をロストする恐れがなくなります。生成と同時に画像のDL先を指定するメニューが開きます(ブラウザ設定によっては指定場所に自動DLも可能)

・キャラクタープロンプトもインポート可:図版2